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誰に言われるでもなく、好きなことに没頭できるのは大人の特権。この時間があるからこそ、仕事の疲れも吹き飛び、明日への一歩が踏み出せる。
この連載では、ゲストの幸せな時間にフォーカスし、その幸せをおすそ分けしてもらう。

連載第4回のテーマは「カレー」。使うスパイスや具材によってそのバリエーションは無限大。食べて美味しい、作って楽しい、仲間が集えばさらに広がるカレーの魅力。今回は、カレーをキーワードに集まった3人の方に、カレー愛を語っていただいた。

一緒に作ってもよし。持ち寄ってもよし。ひたすら食べるもまたよし。

今日は、インド食品の輸入販売や開発を手掛けるシャンカールノグチさん、日本を代表するインド楽器タブラ奏者のユザーンさん、ミュージシャンの原田郁子さんが、みんなでカレーを作って食べようと集まった。言うまでもないが、全員がカレー好き。

シャンカールさんは、本業の傍ら、カレーに関するイベントを主宰しながらカレーの魅力を発信している。生まれたときからカレーは切っても切れない縁だ。

一方ユザーンさんは、インドの太鼓タブラに魅せられ、1年間インドで修業をしていた経験がある。その後も毎年2,3ヶ月はインドに滞在。毎日のようにカレーを食べ、地元料理の作り方を教えてもらっているうちに、タブラ奏者としてのみならずカレー専門家としてもすっかり有名になり、今ではカレーレシピ本の監修をしているほどだ。

原田さんは、おすすめのカレー屋をユザーンさんに教わるうちに、すっかりカレーの魅力にはまってしまったとか。

以前「インド」と「カレー」が縁となって知り合ったシャンカールさんとユザーンさんが久しぶりの再会を喜ぶ。「5年ぶりかな?」「インドで一緒にベンガル料理を食べて以来だね」とお互いの近況を確かめ合う。

今日は、シャンカールさんが、ちょっとしたコツでできる本格的なカレーの作り方を教えてくれるとのこと。ユザーンさんは、腕によりをかけた自作カレーを持ち寄ってくれた。どんなカレーなのかは、鍋のふたを開けるまでのお楽しみ。カレー作りの工程をぜひ習いたいと、原田さんは、メモとペンを片手に準備万端。

この日、シャンカールさんが教えてくれるのは「チキンカレー」。
たっぷりのバターとカルダモンやクローブなどのスパイスと玉ねぎを炒め、さらにトマトとヨーグルト、鶏肉を加えて煮込むというもの。ユザーンさんと原田さんもお手伝い。

玉ねぎを切ったり、ショウガやニンニクをすりおろしたり、わいわいと作業を分担しながら和やかに時間が流れる。
下ごしらえをひとしきり終えたあと、誰からともなく「もう飲んじゃおうか?」「飲みたいよね」と声が上がる。
ホールスパイスを入れてあたためたバターが、熱を帯びてぷっくらと泡立ち膨らむタイミングで玉ねぎを投入したい。その瞬間を推しはかりながら、プルトップをプシュ! キッチンに立ったまま、グラスに注ぎクイッと一息で飲む。

「スパイスのにおいが一気に立ち込めてきた、このタイミングで飲むのが最高なんですよ」とユザーンさん。

トマト、ヨーグルトを加え、鶏肉に絡めるように煮込んでいく。
「ホールスパイスは、最初から煮込めば柔らかくなるんですよ。粉のスパイスはトマトを煮詰めたあとに入れてね」「玉ねぎはちょっと焦げ目がつくくらいがカレーのいい味の役目を果たしますよ」とポイントをレクチャーしてくれるシャンカールさんの手元を見つめながら、原田さんも真剣にメモを取る。

スパイスの薫りが場に満ちれば、なんとも言えない一体感に包まれる

カレーを作りながら、さらに話題はイベントの話へ。
シャンカールさんとユザーンさんが出会ったのは、5年ぶりとのことだが、実は最近ニアミスもしているよう。

シャンカール「蒲郡の『森、道、市場』というフェスに先日出店しましたよ」

ユザーン「あ。ぼくも演奏しに行ってた」

音楽フェスでのシャンカールさんの出店はいつも大人気。「やっぱりスパイスの気でフェスが盛り上がるのかな」とシャンカールさんは言う。

一方、ユザーンさんと原田さんは、これまでにカレー付きライブを何度も開催したことがあるそう。ユザーンさんおすすめのカレー屋さんにお客さん全員分のカレーを用意してもらって、開場したらまず食べる。それからライブが始まる。

原田「会場は、スパイスの香りでいっぱいになって、なんとも言えない一体感が生まれるんです。ライブ始まるころには、お客さんたちはすでにぽわーんと幸せそう。あの感じは他にないですね」

ユザーン「みんな、音楽よりカレーを目的に来てるんです」

シャンカール「いやいや、そんなことはないでしょう(笑)」

作業をしつつ、談笑しつつ、刺激的な香りに包まれながらゆったりと時間が流れる。

作って楽し。食べて美味し。仲間と分かち合う奥深いカレーの世界

「もちろん、調理後に食べて楽しむために作っているんですけど、料理をするということ自体も面白いですよね。出来上がったものを一緒に食べてくれる人がいると、さらに楽しい」と言いながら、ユザーンさんも、持ってきたカレーの仕上げに軽快な包丁さばきで取り掛かる。鍋を火にかけ、ふたを開けると丸ごとの魚が乗った何やら黄色い鮮やかなカレーが目に飛び込む。あまり見かけないビジュアルに、思わず鍋をのぞき込む原田さん。

マスタードがたっぷり入った魚のカレーは、ベンガル地方の郷土料理だそうだ。ユザーンさんはこの料理が大好きで、ぜひ友人たちにその味を知ってほしいと腕を振るってきた。今回は食材に旬の鮎をチョイス。

熱したマスタードオイルにブラック・クミンを入れて香りを出し、そこに玉ねぎ・しょうがを入れて炒めたのち、あらかじめ素揚げしてあった鮎を投入。さらにマスタードシード、青唐辛子、ケシの実などをペースト状にしたものを加えて煮込んだという。少量の水を加えてあたため直してから、コリアンダーを刻み入れ、塩で味を決めた。

シャンカールさんもガラムマサラや粉のスパイスを加えて仕上げ。トマトとスパイスの薫り高いチキンカレーが出来上がった。

インド特有の長細い米、バスマティライスを挟んで、北インドのシャンカールさんのカレーと東インドのユザーンさんのカレーを盛り付ければ、あたかもベンガル川を挟んで北インドと東インドが対峙したよう。

スパイシーな刺激と喉ごしのいい泡が、幸せ時間を演出

完成したカレーをテーブルにセットし、改めてビールで乾杯!
思わず笑みがこぼれる。

全員「いただきまーす!」

ユザーンさんが慣れた様子で手で食べ始めると、シャンカールさんと原田さんもスプーンを置いてそれに続く。

原田「どうやるの?」
ユザーン「ライスとカレーを混ぜて、指先だけで食べるの。特に魚はこの方が食べやすい」

シャンカール「指でお米をつぶすと、お米からアミノ酸が出て、美味しくなるとインドで聞きましたよ」

見よう見まねで混ぜながら食べる原田さんも「美味しい!」と満面の笑みだ。

二種類のカレーは、カレーという名のもとにあるまったく異なる味のもの。
「結構さっぱりしている。でも味わい的にはマスタードでスッと味がついている。これはうまい」と舌の肥えたシャンカールさんも、ユザーンさんのカレーを絶賛。「あえて、両方のカレーと混ぜて食べても味わいがあるよ」

シャンカールさんのカレーは、どんな感想が聞かれるだろう。

ユザーン「こんなにバターを使うんだって驚きました。かなり濃厚な口当たりになるのかなと思っていたけれど、食べてみたら全然くどくない」

原田「うん。あと、炒めるときに結構ほったらかしていて、びっくりした。焦げ目がコクや風味になると。なるほどなーって。家でもぜひ作ってみたいです」

それぞれの力作を味わいながら、会話もはずむ。

スパイシーな刺激に、喉ごしのいいヱビスビールが心地よい。

原田「やっぱり美味いなぁ」
シャンカール「うん、個性の強いカレーには、香りの強いヱビスビールが合うね」

ユザーン「そういえば、新しくできたスリランカ料理屋に行ったんだけどさ」
ビール片手に、また一口。まだまだカレー談義は終わりそうもない。

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ユザーン
北インドの打楽器、タブラの奏者。修業のため毎年インドを訪れるうち、次第にカレーの虜に。今年6月には、自らが監修したベンガル料理のレシピ本『ベンガル料理はおいしい(NUMABOOKS)』が出版された。
シャンカールノグチ
インドアメリカン貿易商会3代目。「東京スパイス番長」に所属。カレーに関するイベントの主宰や、メディア出演を通じてカレーの魅力を発信し続けている。閉店が惜しまれた新宿ボンベイのメニュー監修をして6月末に代々木に復活のオープンをさせる。
原田郁子
バンド「クラムボン」のボーカル、鍵盤担当。バンド活動と並行して、様々なミュージシャンと共演、共作、ソロ活動も精力的に行う。ユザーンとは吉祥寺キチムでカレー付きイベントを開催するなど交流が深い。