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誰に言われるでもなく、好きなことに没頭できるのは大人の特権。この時間があるからこそ、仕事の疲れも吹き飛び、明日への一歩が踏み出せる。
この連載では、ゲストの幸せな時間にフォーカスし、その幸せをおすそ分けしてもらう。

連載第6回のテーマは「相撲」。力士から転身した落語家の三遊亭歌武蔵さんと相撲好きの両親のもとに育った根っからの相撲ファン(スー女)である山根千佳さん。スポーツとしても伝統文化としても楽しめる奥深い相撲の魅力を伺った。

家族旅行は、相撲観戦と相撲部屋巡りだった!?

歌武蔵さんは、お父さんが力士だったことや、祖父母と同居だったこともあり、小さな時から相撲は身近な存在。体も大きく、中3の時にスカウトされて角界入りを果たしたものの、1年足らずで噺家へ転身した。一方、山根さんは、ご両親と弟の4人家族そろって相撲好き。子どもの時から筋金入りのスー女だそう。

山根「私は家族旅行で相撲を楽しんでいました」

歌武蔵「家族旅行で相撲を楽しむって、どういうことなの?」

山根「出身は鳥取ですが、旅行は大阪か九州、名古屋、東京なら両国でした。相撲観戦がメインで、ついでに観光だったんです。東京だったら両国近くの部屋をなん部屋かまわって、お相撲観戦。入待ち出待ちをして、そのあとに夜ちょっと浅草に行く」

歌武蔵「夜の浅草、静かすぎるでしょ(笑)。うちは親父も力士だったし、じいさんとばあさんが一緒に暮らしていたから、生活の中に相撲があったね。夕方4時から6時は、たいてい相撲か水戸黄門だったなあ。チャンネル権は握られていたから、学校から帰って見たいアニメがあっても見られなくて」

山根「我が家も場所中は毎日相撲にチャンネルを合わせていました。あまりにも当たり前でどこの家でもそうだと思っていたのですが、どうやらほかの家はそうでもないらしいと気づいたのは、小学校のときでした(笑)」

歌武蔵「山根さんは、今のスー女の先駆けですけれど、そういう環境だったんですね」

山根「相撲のお仕事ができるとも思ってなかったので、それが最大の親孝行です。「この親方と共演したよ」とか写真を送ると両親もすごく喜んでくれます(笑)」

歌武蔵「来場所あたり、放送ブースで解説しているんじゃないの?」

山根「いえいえ(笑)」

歌武蔵「私は、同期に貴闘力がいて、戦績は1勝1敗!それだけに、2000年に貴闘力が優勝したときはうれしかったなあ。泣けて泣けて。自分はやめてしまったけれど、一緒に対戦した奴が残って、そのあとずっと頑張って優勝。それがどれだけ大変なことかわかるからねえ」

山根「とった人しかわからないお相撲のことって、もっといろいろ聞きたいです!」

歌武蔵さんは、力士から噺家へ転身したあとも、相撲愛は変わらず、落語のマクラに相撲ネタを入れて、会場で笑いを誘う。それも、相撲をあまり見たことない人に一人でも多く興味を持ってもらいたいとの思いからだとか。

「結構辛辣なことをチクチク言っているけれど、相撲協会からお咎めがあったことは一度もありません。相撲の世界は度量が広いよ」とニコニコ。

五感で楽しむ相撲の魅力。土俵入りは、競馬場のパドック!?

相撲の魅力はどこにあるのだろうか。山根さんは、五感を駆使して相撲を楽しんでいるよう。

山根「まず、香り。力士の方がいる場所ってびんづけ油のいいにおいがするんです。女性ならメロメロになっちゃうと思います。その香りで一気に空間に引き込まれてしまう」

歌武蔵「お!今日、びんつけ油をつけてくればよかったなあ(笑)。両国辺りに来れば、お相撲さんにたくさん会えるのはそれだけでも楽しいよね。真っ白なTシャツを着て行くといいや。前から後ろから全部サイン書いてもらえるからね」

他のスポーツより、力士とファンとの距離感が、ぐっと近いのも相撲の魅力の一つ。有名な力士も声をかければ、サインをしてくれたり、いっしょに写真を撮ってくれることも多い。山根さんは、マイルールを設けていて、出待ちのときに話しかけたり、写真を撮ってもらうのは勝った人に限っているとか。

ちょっとしたふれあいがあれば、一気にファンになってしまうということもありそうだ。

山根「それから土俵入りは、競馬場のパドックのようなものですよね!」

歌武蔵「パドック!」

山根「力士の肌ツヤもですけど、お尻の上がり具合この人いいわぁ~って。馬のパドックみたいに、コンディションのいい悪いがわかるようになってきた瞬間がすごく楽しかったりします」

歌武蔵「それはすごいよね。なかなかいないよ、そんな人(笑)」

山根「音も楽しめますね。取り組みが始まると、立ち合いのぶつかる音も本当にかっこいいなあと思いますし。体につけているのは、まわしだけ。道具も何もない、体と体のぶつかり合いの音って、一番遠くの自由席に座っていても聞こえるんです」

歌武蔵「上までバチーンと聞こえますね。今って土俵の上の方にマイクがぶら下げてあるから近くの席じゃなくても遠くからでも聞けるようになりましたね」

山根「倒れるか倒れないか、出るか出ないかといった勝負が分かりやすいのも魅力ですが、私は立ち合いの瞬間が好きです」

歌武蔵「立ち合いは心理戦でもあるので、駆け引きがすごいからね」

山根「スポーツだけど、心が大事なスポーツなんだなっていつも思いますね」

歌武蔵「取り組みの時に、出身地を言うのもなんだかいいよね」

山根「同じふるさとだと思うと、つい応援しちゃいますからね」

歌武蔵「スポーツでいちいち出身地を言うのってほかにないんじゃないかな。それも相撲のいいところですよねえ。江戸時代からの名残かな。全国からいい選手を集めたってのは、相撲が最初かもしれないですね」

勝った負けたでワーッと喜ぶのは、今も昔も同じだね

歌武蔵「相撲はスポーツ、格闘技、神事、エンタメ。いろんな要素があるんですよ」

日本の相撲の起源は、古事記や日本書紀にある力比べの神話と天覧勝負の伝説に始まる。その後、農作物を占う神事として、武士の時代には、体を鍛える訓練として、また、全国から力自慢を呼び寄せ、勝ち抜いたものを家臣として召し抱えることもあった。

江戸時代になると、相撲を生業とする人たちも出て定期的に開催されるようになり、庶民も娯楽のひとつとして楽しむようになっていった。

歌舞伎や落語には、相撲を題材としたものも多く、江戸時代の庶民が夢中になって楽しんでいたことがよくわかる。

歌武蔵「日が暮れたらみんなご飯食べて寝ましょうっていう時代にさ。歌舞伎やお相撲、寄席っていうのが庶民の数少ない娯楽だったんだね。今じゃいろいろと楽しめるものがたくさんあるけれど、それでも相撲を見て、勝った負けたでワーッと喜ぶっていうのは、今も昔も同じでしょうね」

山根「今も昔も同じと言えば、見た目もそうですよね。今どき、ちょんまげで歩いてる人なんて、相撲以外にいないじゃないですか(笑)」

歌武蔵「はは。そりゃそうだ。ちょんまげのほか、土俵入りや、番付表、化粧まわしも江戸時代そのまま残っているんだから、すごいことですよね」

家飲みか。升席飲みか。取り組み後の店飲みか。

相撲談義は尽きることもないが、そろそろ乾いた喉を潤したい。グラスにビールをついで乾杯タイム!

山根「ああ。香ばしい。泡のきめの細かさがうれしいなあ。香りがいいから『わあ、飲みたい』と思わせてくれますよね」

歌武蔵「特にヱビスビールだと、「格上の贅沢」って気分になるね。恵比寿様の背後の籠にもう1匹鯛がはいっているラッキーヱビスってのがあるんですよね」

山根「今度見つけてみます! 私はお酒も好きですけれど、両国で観戦する時は必ずビールです。買って持ち込むこともできるし、升席に座っているとお茶屋さんが持ってきてくださるんですよね」

歌武蔵「アメリカだとプロレスディナーみたいなのがあるけれど、相撲はそれの元祖だよね。江戸のころからあそこで観戦をしながら食事をするのが庶民の楽しみで、幕の内弁当ってそういう意味ですからね」

山根「そうなんですね! 歌武蔵さんは、升席で見るんですか?」

歌武蔵「ありがたいことに仕事で度々行くことはあるけれど、実は、プライベートでは両国には行ったことないんですよ。頑張って続けている人たちがいる中で、申し訳ないというか後ろめたいというか、すまねえという気持ちで」

山根「感動です…」

歌武蔵「もちろん相撲は好きだから、毎日結果が気になってテレビは見ているけれど。うちにはビールもあるし、つまみもあるし。仕事がなければ、4時から一杯やっています」

山根「私は、升席で飲むビールも好きですが、取り組み後も、ちゃんこ屋さんによく行きますよ。6時以降は混むので、予約は必須ですね。両国で出会ったマダムとかと取り組みを見て、ちゃんこ屋で今日の取り組みがどうだったとか話す時間がすごく楽しいんです(笑)」

歌武蔵「それはまた、濃いですな……」

テレビを見ながら家でゆるりと飲むのもいい。升席で見て、声を枯らして応援しながら飲むヱビスビールもまた格別。取り組み後に、にぎやかに飲むのもまた楽し。

今日もまた、力士の汗と涙に想いを馳せ、泡が飛ぶ。

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三遊亭歌武蔵
1968年生まれ。岐阜県出身の噺家。1983年武蔵川部屋に入門。1983年12月3代目三遊亭円歌に入門。1998年真打昇進。
山根千佳
1995年生まれ。鳥取県出身。タレント。相撲女子のスー女の走りと言われる。大の相撲好きが高じて相撲関連の番組に数多く出演。場所中は毎日ブログにて相撲解説を更新中。