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※「Pen」2016年8月1日号掲載の記事です。

「賀茂ナス」の名称が定着したのは、京都市の上賀茂などで盛んに栽培されるようになった明治時代と伝えられる。現在では「京の伝統野菜」と「ブランド京野菜」の認証品目に指定されている。

ナスは英語でeggplant=エッグプラント。直訳すれば「卵型の植物」となるが、私たちにお馴染みの細長いナスのどこをどう見ても卵とは思えない。ナスはインドが原産地とされており、世界中に広がっていく過程で活発に品種改良され、1000種類以上あるともいわれる。このうち卵型のナスが流行した頃に命名されたようだ。実際に、アメリカでは皮が真っ白で、まさに卵に緑色のヘタをつけたようなナスが栽培されている。
日本にもそれに負けないユニークな形のナスがある。夏を彩る京野菜の代表とされる「賀茂ナス」だ。直径10〜15㎝の球形で、まるで大きめのソフトボールだが、紫紺色の表皮は艶々と光輝き、太陽の恵みをたっぷり受けてきたことを感じさせる。

普通のナスにはない、締まった歯ごたえが魅力。


京都・上賀茂産 賀茂ナス

それを調理する今回のレシピは「揚げ出し肉味噌かけ」。
ナスは淡白な味なので料理方法はいろいろあるが、とりわけ油と相性がいい。ただし、普通のナスを揚げると皮を除いて肉質がぐずぐずになりがちだ。ところが「賀茂ナス」は、肉味噌の味を引き立てながらも毅然として弾力を維持。その締まった歯ごたえが際立った魅力といえるだろう。

このプレミアムな食材に、キメ細かな口当たりでコクの深いヱビスビールが素敵にマッチングする。ホップの香味豊かな苦みが、肉味噌と調和した「賀茂ナス」のほのかな甘みをさっぱりと洗い流して、次を促すのである。
「賀茂ナス」の旬は6月から9月くらいまで。産地限定の特別な食材には、繊細な香味バランスにクオリティアップされたヱビスビールがよく似合う。真夏の猛暑も愉悦になり得ることを教えてくれるコンビネーションだ。

賀茂ナスの揚げ出し 肉味噌かけ

材料

賀茂ナス/1個 ししとう/2本
長ネギ/約4㎝ 木の芽/適量
味噌/大さじ4杯 酒/大さじ3杯
砂糖/大さじ3杯 ささみ/2本(ひき肉用)
揚げ油/適量 塩/適量

つくり方

1.賀茂ナスは約2㎝間隔で皮をむき、横半分にしたら格子状に切り込みを入れて塩水にさらしてアク抜きをする。
2.ししとうは軸を落とし、種を取り除いて千切りにしておく。長ネギは白髪ネギに。
3.肉味噌をつくる。味噌、砂糖、酒を小鍋に入れて、強火で艶よく練る。一度火から離して、筋を取り、包丁でたたいたひき肉を加えてよく混ぜる。再度火にかけてひき肉に火が通ったら完成。
4.揚げ油を160度に熱して、水気をよくふきとった1を色よく揚げる。ししとうもサッと揚げておく。
5.器に油を切った4を盛り付けて3をかける。ししとうと白髪ネギ、木の芽を添える。

旨味に奥行きを加える、ヱビスビールの香味。

ナスは演劇でいえば名脇役かもしれない。自己主張のない淡白な味だが、料理の相手を引き立てることで自らの旨味を表現するからだ。今回のレシピでも肉味噌の強い味が「賀茂ナス」のほのかな甘みを際立たせる。調理後も締まった肉質で歯ごたえを失わないことも優れた魅力。そのマッチングに絶妙なハーモニーを加えるのがヱビスビールだ。飲んだ後に鼻を抜けていく芳醇な「後香(あとか)」が、旨味に奥行きを感じさせてくれるのである。

宇田川 淳・写真 photographs by Jun Udagawa
笠木恵司・文 text by Keiji Kasaki
廣松真理子・フードコーディネート food coordinate by Mariko Hiromatsu

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