特別な縁起物で、福々しい気持ちになる。

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「うちには縁起のいいものしかないよ。縁起の悪いものなんて、誰も買わないからね」と言うのが「助六」の五代目店主・木村吉隆さんの口癖。浅草の仲見世通りにある「助六」は1866年創業の、江戸趣味小玩具の専門店。享保時代、幕府から「贅沢禁止令」を出され派手な玩具を楽しめなくなった江戸の町民たちが、小さくて精巧な玩具をつくったのが始まり。現在25名の職人を抱え、3500点もの玩具が棚に並ぶ。それぞれに意味があるが、すべて健康を呼ぶ縁起物。健康こそ、幸福への第一歩だからだ。

幸せや笑顔に寄り添う、江戸玩具と特別なビール

「僕は何もつくれないんです。42歳でサラリーマンを辞めて、店を継いだから。アイデアを出すのが仕事」木村さんは助六の名プロデューサー。浮世絵を見たり、客と話をしたり、あらゆるところからアイデアが浮かぶという。「赤梟」や「笊かぶり犬」など名物を次々と生み出してきた。「いまはどこでも同じようなものが買えるでしょう。うちは『面白いね』『また来たいね』って言われる店にしなきゃと思って。そうしないとお客さんも喜ばないじゃない」ハレの日、とっておきの日に飲みたいヱビスビール。缶に描かれている恵比寿様には商売繁盛や五穀豊穣のご利益があり、「助六」でもお馴染みのモチーフだ。「つくり手からすると、神様では恵比寿様が一番。ほら、カラフルで、グッドデザインでしょう」と、木村さんは店の棚から恵比寿様の玩具をどんどん出してくれる。

釣りに興じる恵比寿様、獅子舞の背に乗る恵比寿様……どれも目に入れるだけで福々しい気持ちになるものばかり。縁起物とはすなわち、人の幸福を祈るためのもの。大切な人に贈るヱビスビールも、必ず誰かの幸せや笑顔に寄り添っている。「次はこういうのをつくろうと思っていて」と、木村さんは玩具のアイデアが書かれたノートを見せてくれた。新しい福が、今日も小さな店の片隅で生まれている。

江戸玩具・助六EDOGANGU SUKEROKU
●右:主人の木村吉隆さん。店の棚には、自分が「よい」と思ったもののみ並べている。左上:間口一間の「助六」店内。始終、観光客が棚を覗き、遠方から訪れるコレクターも多い。左下:動物、植物、神様、屋台など、助六の縁起物はどれも色彩豊かで賑やか。縁起物にも季節ものや流行があり、6月のお薦めは紫陽花だ。