※「Pen」2016年1月1日号掲載の記事です。

京都・南禅寺畔の「瓢亭」は、創業450年の料亭。朝がゆや、瓢亭玉子が名物だが、新年にその味を堪能するならおせち料理だ。
「冷めてもおいしい料理を、美しく詰める。おせちには、日本料理の長けている点がよく活かされていると思います。家族で、いろいろな料理を少しずつつまめるのが醍醐味ですね」
伝統を受け継ぐ瓢亭15代目・髙橋義弘さんはそう語る。瓢亭の定番となりつつあるおせち料理は、鰆の幽庵焼き、ぐじの雲丹挟み焼き、サーモン砧巻きなど。料理は時代ごとに進化するもの。瓢亭も慣習ばかりにとらわれず、料理は少しずつ進化している。

家族と幸福を祈る、正月の立役者「おせち」。

仕切りを使わないのも瓢亭の特徴だ。
「料理の間には菊の葉を入れています。煮炊き物の隣には酸味のあるものを置かないとか、考えながら盛りつけるので完成には時間がかかりますね」
他の品をつぶさないよう、食材ごとの香りが活かせるよう配慮する。お重の中ではすべての料理が主役。職人ならではの細やかな気配りと歴史に裏打ちされた技術が、お重を芸術品のような美しさにまで高めている。

おめでたい日の乾杯には欠かせないヱビスビール。最もふさわしい舞台は、やはりお正月の席だろう。
「和食とビールは相性がいいですね。ビールの清涼感が、料理によいリズムを与えてくれるんです」
ビールとあわせたいおせちは、もともとは五穀豊穣を司る“年神様”のための供物料理。家族の1年の繁栄と幸福を祈る縁起物でもある。飲む人に幸せな時間をもたらすヱビスビールは、その願いを後押ししてくれるようだ。
「うちも昔は元日が休みだったので、ゆっくりしながら、親父と一緒におせちをつまんだのもいい思い出ですね」
父で14代目の髙橋英一さんとは、今でもともに厨房に立つという。おせち料理は、家族の幸福を願う心の象徴なのかもしれない。

旬と独自性を追求し、最高の味を提供する。

さまざまな工夫が凝らされた瓢亭のおせち。「料理屋でこその品を味わってもらいたいので、家庭でつくることができるゴマメなどは入れていません。冬が旬の食材を中心に、金柑や柚子の蜜煮などを入れ、味や香りのアクセントを出しています」。素材にこだわった特別なおせちには、同様に素材からこだわったヱビスビールで乾杯をしたい。

岡部 浩・写真 photographs by Hiroshi Okabe
加藤茶子(N35)・文 text by Chako Kato
田中康嗣(和塾)・協力 cooperation by Kouji Tanaka

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