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ちょっと気の利いたビアパブに行けば、そこには多種多様なビール。そしてそれぞれを注いだグラスをのぞき込めば、味もさることながら、全く違う色合いに驚かされます。

こうした個性豊かな色合いのバリエーションは、同じブランドのビールでも生まれ得ます。例えば、今年もお目見えする、ヱビスの期間限定の味、『琥珀ヱビス』の缶ビール。その名のとおり、琥珀のような深みのある赤い色合いが特徴です。一方、定番のヱビスビールは透き通った黄金色。両者同じく、水と麦芽とホップを素材としながら、なにゆえにこのように色合いが異なるのでしょうか。基本的なことでありながら、よく考えると分からない、ビールの色合いの秘密を、ビール醸造に超詳しい方に聞いてみました。

ビールの色合いは、〇〇で決まる!

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ビール醸造に詳しい人
サッポロビール株式会社
製造技術本部 製造部 開発グループリーダー
野村真弘さん


91年にサッポロビールに入社。以降一貫してビールの研究・開発畑を歩む。2000年からは工場での醸造の現場業務に参加し、生産に関してもキャリアを積む、まさにヱビスビールの隅から隅まで知り尽くすプロフェッショナルだ。プライベートではヱビスはもちろん、ラガー系ビールをこよなく愛する生粋のビール党でもある。

−いきなりですが、ビールって種類によってどうして色が違うんですか?

野村:では私もいきなり答えましょう(笑)。ビールの色合いは、麦芽によって決まります。副原料を使用しないヱビスの場合、その素材は水、ホップ、そして麦芽。この中で、色合いを左右するのは麦芽です。試しにホップだけをお湯で溶いても、薄い黄緑色が発色するだけです。しかし、ここに麦芽が加わると、様々な色合いが生まれるんです。

−えっ?でも、麦芽100%なのは、ヱビスビールも琥珀ヱビスも共通ですよね。それなのに、なぜこんなに色が違うのですか?

野村:それは、異なる種類の麦芽を使っているからです。通常のヱビスビールではピルスナー麦芽と呼ばれる麦芽を使っています。琥珀ヱビスの場合、カラメル麦芽など、複数の麦芽を使用していますが、琥珀色を出すのに重要なのはクリスタル麦芽という麦芽なんです。

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−なるほど。使用する麦芽の品種が違うんですね。

野村:うーん、その言い方は正確ではないですね。ヱビスビールのピルスナー麦芽と、琥珀ヱビスのクリスタル麦芽は、元は同じ大麦です。もちろん、異なる品種の大麦を使用することもありますが、この場合、異なるのは麦芽への熱入れのプロセスです。麦芽を作るには、大麦に水分を与え、わずかに発芽させます。この状態は緑麦芽と呼ばれます。この緑麦芽を熱風で乾燥させるのですが、そうすると、麦芽はほんのりと黄金色になります。これがピルスナー麦芽です。

このピルスナー麦芽にさらに熱負荷をかけると、カラメル麦芽に。そこからさらに熱を入れると、クリスタル麦芽になり、熱負荷に比例して色合いも濃くなっていきます。ちなみに、こういった段階的な熱入れを経ず、緑麦芽を一気にローストし、炭のような状態にしたものが、黒ビールに使用される黒麦芽(下写真)です。

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−分かってきた気がします。熱を入れれば入れるほど、麦芽の色が濃色になり、その麦芽で作ったビールも濃い色合いになってくるというわけなんですね。

野村:そうです。もちろん、色だけでなく味わいも麦芽の熱の入れ方によって変わってきます。

色の濃度が違うと、味も違う!?

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−そうこなくっちゃつまらないですよね(笑)。でも、色と味わいとはどういう関係にあるんでしょうか。

野村:カラメル麦芽やクリスタル麦芽は、熱によって大麦のデンプンが糖に変わります。これをカラメル反応と呼ぶんです。ほんのり甘くて苦みがある、プリンのカラメルの部分をイメージしてもらえば分かりやすいですが、麦芽もこれに似た味わいになります。琥珀ヱビスを手にしたら、ぜひその味わいを確かめてみてほしいですね。まさにカラメルのようなほのかな甘みが楽しめるはずです。香りも甘みと苦みが一体となった、琥珀ヱビスらしい奥行きが感じられます。麦芽が変わることで、定番のヱビスビールとはまた性格の異なる色、味わい、そしてコクが生まれるわけです。

−麦芽でそこまで変わるとは・・・。逆に、同じ麦芽を使用すれば、同じ色のビールができるものなのでしょうか。

野村:そうはならないのが、ビール醸造の奥深さです。例えば、同じピルスナー麦芽を使っても仕込みの方法、各種麦芽の配合によって色合いや味は変わってきます。琥珀ヱビスであれば、仕込みの際に2段煮沸という製法をとっています。ビールの元となる麦汁を作る際には煮沸工程が不可欠ですが、琥珀ヱビスの場合、狙った温度まで温めるための煮沸を2回行うという一手間を加えています。こうすることで、完成したビールには、深いコクが生まれるわけです。

−どの麦芽を、どのくらい投入するか、という配合はどのように決められるのですか。

野村:この配合こそ、醸造技術者の腕の見せ所です。狙った味、そして色を作り出すための配合比は、蓄積された研究データも重要ですが、長年の勘と経験がものを言います。そして、そのもっと前、麦芽を作るのにも経験が大事なんです。

恐るべし!醸造技術者の経験と勘

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−麦芽を作るのってそんなに大変なんですか。レシピがあって、そのとおりに熱を入れるわけではないと?

野村:大麦は農作物です。ですから年によって微妙に性質は異なります。前の年と同じ熱の入れ方をしても、同じものができるわけではありません。微妙に異なる大麦を、常にヱビスの最高品質を目がけて麦芽に加工しなければなりません。そのため、常に最高の麦芽を作るために、微妙に熱の入れ加減や、焙燥時間をも微調整しています。麦芽を自分の口で食べてみて、微妙な工程調整を推し量ることもあるんですよ。

−まさに・・・職人芸ですね。

野村:さらに、こうして決めた醸造工程でもチェックは欠かせません。常に、人の味覚や嗅覚を使った官能検査で品質をチェックしますし、色合いも目視と機器で狙った色が出ているかをチェックしています。

−そこまでしてヱビスビールの、そして琥珀ヱビスの美しい色が守られているんですね。

野村:技術が発達した今でこそ、機械を使って色を厳密にチェックしていますが、昔はカラーチャートとビールの色を比較して、本当にアナログな手法で色度をチェックしていたこともあるんです。こうやってビールに向き合ってきたからか、飲み屋さんで新しいビールを見ると、つい色合いから醸造工程を推測してしまいます(笑)。

−職人の性(さが)ですね。麦芽、奥が深すぎます。琥珀ヱビスを飲むときは、その色合いの向こうにある麦芽の存在をじっくり感じてみます。どうもありがとうございました!

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琥珀色に宿る、麦芽の力を美味しく感じる職人のこだわりが宿る麦芽が織りなす、琥珀色のドラマが、琥珀ヱビスとして今年も皆さんの晩酌に登場します。しかも、今年は味と色のキモになるクリスタル麦芽の配合量が例年よりもアップ。まさに麦芽の力を体感するのに最適な一杯。その実力は皆さんの目と舌で見極めて下さい!