年始のご挨拶から、歓送迎会などなど、ちょいと大人になってくれば、小上がりで緊張交じりにヱビスをチビリ、なシチュエーションも増えてくるもの。ビールを美味しく楽しむ術には自信があれども、畳敷きのスペースでの振る舞いや、はたまた和のお作法に関してはいかがでしょうか。

良きビール好きたるもの、美しい佇まいでビールを楽しみ、対面する大事な人に「おっ」と思わせたいもの。そして、美しき和の振る舞いといえば、多くの方が茶道をイメージするのでは。今回は、お茶の先生に、茶道の考えに基づく、美しい所作、振る舞い、さらには“おもてなし”の心の基本を伺いました。上質を知るヱビス好きが、凜とした姿でその味を楽しむための術やいかに?

時間と空間を、じっくりと楽しむ

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茶道の先生
岡田宗凱(おかだ そうがい)さん


1982年生まれ。表千家の茶道を学び、茶会という文化を広めたい、という想いから「世界茶会」を立ち上げる。最新商業施設で茶会を開催、現代アートとコラボレーションするなど、日本の美である茶の湯の世界を斬新な感覚とともに世に伝える。ニューヨークなど海外での活動も盛ん。TV、雑誌等、メディアにも積極的に出演し、茶の湯の魅力を広く伝えている。

-茶道の心って何でしょうか?

岡田:いきなり難しい質問ですね(笑)。茶道ではお客様の目の前で茶碗を温め、お茶を点て、お茶の味、お道具などを楽しみます。合理的に考えれば、台所でお茶を点てて持ってきて飲めばすむはずですよね。つまり、茶道の根本には、お茶を点てるプロセスから、味わい、茶道具、茶室という空間などなど、お茶にまつわる全ての要素を楽しむという考え方があります。お客様と時間と空間を共有し、楽しむ。そのための所作や作法と考えてもいいかもしれません。

-まさに「おもてなし」を楽しみ、「もてなされる」を楽しむというわけですね。茶道の美しい所作とは、どんなところに表れるのですか?

岡田:襖の開け閉めから歩き方、掛け軸の拝見など、茶道の美しい所作にはたくさんの要素があります。しかし、和室での宴席といったシーンでも活用できるのは、背筋を伸ばして歩く、座るといった、誰もが美しいと感じる所作ではないでしょうか。ひとつ分かりやすいポイントを挙げるとしたら、指でしょうか。

-指ですか?

岡田:そうです。特に気にかけることなく茶碗を持つと、指は下のように開いてしまいますよね。

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岡田:しかし、茶道においては指はそろえるのが基本です。この指先への気遣いがあると、一目で「この方は心得がある」と感じられます。茶道の美しい所作とは、その歴史の中で洗練が繰り返された賜物です。他にも、すり足で歩くといった作法もあります。

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-少しの心がけで、洗練された振る舞いになるのですね。

岡田:普段よりも少しこだわり、上質な時間を楽しむ。茶道の根本にはこうしたマインドがあると考えています。それはヱビスビールを愛するこだわりのビール好きの方にも通じる考え方ではないでしょうか。

-ビールも少しこだわることで、味わいはより上質になってきます。ヱビスと茶道、意外な共通点がありそうですね。

ほんのわずかな心がけで変わる和の席での所作

-その他にも、こんな所作ができるといい、というポイントはありますか。

岡田:足下に注意を払えるといいですね。例えば、畳の縁を踏んではいけない、ということをご存じですか。習ったことがあるかもしれませんが。

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-・・・言われてみれば。

岡田:これは茶道に限らず、和室でのマナーの一つです。こうした見落としがちなことに注意を払えていると、その方の所作も洗練されてくるのではないでしょうか。それともうひとつ、懐紙を持っておくのはいかがでしょうか。

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-懐紙?それは一体・・・?

岡田:懐紙は文字通り、懐に入れて携帯するための和紙です。茶道ではお菓子を受けるお皿として使ったり、口を拭ったりと多くの使い方がある、欠かせない品です。宴会やホームパーティに招待された際はこちらを持参してみると面白いかもしれませんよ。例えば、折りたたんでこんな風に・・・。

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-コースターの代わりというわけですね。

岡田:そうです。パーティでコースターが足りない、ということもありますよね。懐紙を持っているだけで、「おっ」と感じられる心遣いが見せられるわけです。

茶道の先生は普段、どんなことを心がけている?

-もてなし、もてなされる茶道で培った感覚を、先生は普段どんな風に活用していますか。例えばホームパーティに誰かを招待する場合などはどうでしょう。

岡田:仕事柄、家に多くの方を招待する機会が多いのですが、心がけているのは、紙皿や割り箸を使わない、ということでしょうか。使い捨てずに、物を大事にしたい、という思いもあるのですが、せっかくの席だから、こだわっておもてなしをしたい、という気持ちからです。茶道ではお茶だけでなく、茶器や茶室のしつらえなども工夫します。茶碗もこだわって選んだものをお客様に楽しんでもらうわけです。

パーティでも同じです。季節やパーティの趣旨に応じて、食器にこだわり、それを楽しんでもらう。別に高価な食器である必要はありません。ちょっとこだわって選んだもので提供すれば、食事も美味しくなると思いますし、「素敵な食器ですね」と会話のキッカケにもなります。ビールだって同じですよね。缶のまま飲んでも美味しいですが、ちょっとグラスや温度にこだわるだけで、もっと美味しく楽しめますよね。

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-まさに上質を楽しむ、ということなんですね。

岡田:そうです。わずかな差が上質を生み出す。それは、茶道にも通じる心です。

-なるほど。では、招待される場合はどんなことを心がけていますか。

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岡田:手土産には気をつかうようにしています。招待する場合と同じように、少し気の利いたものを用意するよう心がけています。その際、重要なのは、会の趣旨に沿ったものを選ぶことです。誰かをお祝いする会であれば、その方の好きなものを。ビールを楽しむ会であれば、ビールに合うおつまみを持っていく、という具合です。ただなんとなく選ぶのではなく、会やそこに集う人を気遣い、こだわったものを選ぶ。そうすれば、会がもっと楽しくなると思いませんか。

-茶道は難しそうな印象でしたが、その考え方は、パーティでも活用できるものが多そうですね。今日はありがとうございました!