ギフトページがお中元仕様になりました!
ヱビスマガジン
ビール時間がもっと楽しくなる情報を
お届けするヱビスマガジン!
大人のビール好きのたしなみ講座!これが日本のわびさび?「町中華」という愉しみ
赤い暖簾をくぐると、なんとも芳ばしい油が焼ける香りに包まれ、カンカンと鍋がコンロを叩く音が店内に鳴り響く。
テーブルに届く、チャーハンと餃子。そそくさと口に運び、返す刀でビール、ここはヱビスの瓶で口中をリフレッシュ。幸せなり町中華。
「ん、町中華?」
そうです。どんな町にも駅前にも必ずあり、地域の人々に長年愛される中華料理屋さん。おそらく、皆さんも一度は足を運んだことがある、“あの感じ”なお店です。最近、町中華がちょっと注目を集めているのをご存じでしょうか。
中華といえば、言うまでもなくビールの絶好のパートナー。ビール好きならば、この町中華を堪能しないわけにはいきません。今回は、「町中華探検隊」を主宰し、各所の地場の中華料理屋さんを訪問しまくる北尾トロさんに、深遠なる町中華の世界を教えてもらいました。
町中華、その定義とは?
町中華に詳しい人
北尾トロさん
裁判傍聴から狩猟まで、自身の興味がおもむくままに執筆活動を行うフリーランスライター。興味が高じて、町中華を食べ歩き、記録、情報保存を行う「町中華探検隊」を結成。ブログには数多くの町中華の記録が記されている。雑誌やテレビにて町中華の魅力を積極的に発信している。
—記憶にはありますが、言われてみなければ町中華を意識することはありませんでした。
北尾:そうでしょう。もともと、学生時代によく行ったお店が、ある日突然閉店してしまったのが町中華探検隊を始めたきっかけだったんです。そして、ちょっと意識してみると、いわゆる町の中華料理屋さんはどんどん数が少なくなってきている。そこで「これは記録にとどめねば」と思ったわけです。でも、ちょっと注目してみると、町中華は実に奥深い。
—気になるのは、「町中華」の定義です。
北尾:最初の頃こそ、「カツ丼、カレー、オムライスがあるお店こそ、町中華だ」なんて言っていましたが、実は定義はすごく曖昧です(笑)。というのも、いろいろなお店に行くほどに、お店ごとの個性や成り立ちがあって、とても町中華を一言ではまとめられない。行けば行くほど定義が曖昧になってしまうんです。
だいたい、赤い暖簾に白い文字で屋号が入り、年代物のテーブルでメニューの短冊が所狭しと壁に貼られている、のように視覚的にはなんとなく共通する部分はあるんですが。
—そのイメージ、なんとなく分かります(笑)。
北尾:定義が曖昧だから、町中華のどこに魅力を感じるかも、人によって違いますよね。僕は、寛容で懐が深い部分に惹かれる。中華と言いながら、それこそカレーがあったり(笑)。メニューがやたらたくさんある店がありますが、それも常連さんのリクエストに応じていたら、いつの間にか品数が増えてしまったから。こんな寛容さを楽しめるのは、町中華ならではですよ。
どこを選ぶか。何を食べるか。それが問題だ
—少なくなりつつある、とはいえ、たくさんある町中華のお店から、北尾さんはどのように「これだ!」というお店を選ぶんですか。
北尾:町中華は一期一会です。気になったら入ってみるのが基本ですが、強いて言えば、掃除が行き届いている、という点は、いいお店の基準になるかもしれません。
—掃除ですか。
北尾:例えば店先の食品サンプルまできっちりと掃除してあるか、のような細かい部分ですよね。こういったお店は、店主の方にしっかりと商売に対する情熱がある証ですよ。それだけに、お店に入った後も期待が大きい。
—なるほど!では、肝心なメニュー選びに関しては、どのようなこだわりがありますか。
北尾:まず、複数人で行くなら、麺、ご飯もの、定食、のように、バリエーションを持って注文するのがいいですよね。こうすれば、そのお店が何を得意としているかが分かりますから。
—一人の場合はどうやってメニューを選ぶのですか。
北尾:一人で行く場合は、ちょっとメニューに見極めが必要ですよね。チャーハン、餃子、ラーメンという大定番を頼むのもいいのですが、僕の場合は、メニューの先頭に載っているような、店主の「これだ!」という気合いを感じる一品を選びたい。あとは、追加で生まれたメニューも捨てがたいですね。その一品だけ、短冊の色が変わっているような、後から生み出したメニューも魅力です。つまり、店主の方がお客さんに食べさせたいと思っている、作りたいと思っている自信作を食べる。そうすれば、そのお店の一番のパフォーマンスが楽しめるじゃないですか。
—メニュー選びひとつでも、奥深いです・・・。
北尾:「町中華探検隊」なんて言ってますが、僕はそんなに量が食べられる方ではないので(笑)。だからこそ、せっかく食べるのだったら、一番美味しく食べられるものを選びたい。お酒を飲む場合も同じです。ビールを飲むのだったら、しっかりしたものを飲みたいので、選べるのならヱビスビールを選びたい。
—町中華もビールも、一期一会で最も楽しめるものを選ぶというわけですね。
中華好きを唸らせるヱビスビールはこうして生まれる
町中華で一杯の妙味
—町中華でお酒を楽しむこともあるのですか?
北尾:我々は「中華飲み」と呼んでいます(笑)。餃子、チャーシュー、メンマなどなど、そもそも町中華にはビールのおつまみにちょうどいいメニューがありますから。それに、ちょっとパワフルな町中華の料理もビールに合いますよ。
—言われてみれば。
北尾:町中華で飲む楽しみは他にもありますよ。忘れてはならないのは、町中華には地元の常連さんがたくさんいることです。そういった常連さんたちとのちょっとしたコミュニケーションも楽しい。そして、肝心なのは、町中華は“飲み屋ではない”ということです。飲み屋ではないから、店主の方も無理して話しかけないし、他のお客さんとも無理してからむ必要もない。
しかし、話しかけようとすればそこに誰かがいる。運が良ければ、常連さん同士や店主の方の間で、それこそ何十年も語り継がれる定番のエピソードに触れられるかもしれない。飲み屋にはない、絶妙な距離感が楽しめるのが中華飲みのポイントです。
—その距離感に、絶妙な大人のダンディズムを感じます。
北尾:蕎麦屋飲み、とはまた一味違う楽しみ方ですよ。店によってはヱビスビールが飲めるところもありますよ。元来、ちょっと格式の高い中華料理屋さんが、定食など町中華の要素を取り入れているお店、僕は“下りてきた町中華”と呼んでいますが(笑)、こういったお店では贅沢にヱビスビールが飲めることがありますよ。
—町中華で一杯。ぜひ試してみたくなりました。
北尾:ぜひ。町中華は一見さんには入りにくい印象がありますが、先入観を捨ててお店に入って楽しむことをオススメします。できれば、店主の方にちょっとだけ話しかけてみるといいですよ。「このお店はいつからやっているのですか?」のように、ちょっとした一言で大丈夫です。無口そうに見えても、実は話し好きという店主の方も多いですから。長年商売をやっている方たちらしく、ちょっと聞いただけで思わぬ面白い話が聞けるかもしれません。あ、話しかけるのはお会計のときですよ。これがポイントです。
—分かりました(笑)。帰りにさっそく町中華に繰り出してみます!