プレミアム YEBISU

ヱビスマガジン

ビール時間がもっと楽しくなる情報を
お届けするヱビスマガジン!

地元のいいものを学生たちが選んで売る店、
「アナザー・ジャパン」が考える夏ギフト。

地元のいいものを学生たちが選んで売る店、<br>「アナザー・ジャパン」が考える夏ギフト。

東京のど真ん中に「アナザー・ジャパン」——もう1つの日本があることをご存じですか? その正体は、47都道府県の地域産品のセレクトショップ。ただし、仕入れや収支管理、店舗づくり、プロモーション、接客のすべてを全国各地の18人の学生たちが手がけています。もうすぐお中元の季節。ひと味違う夏ギフトを探しに、このユニークな店舗を訪れてみました。

ここは新しい発見と懐かしさのある、もうひとつの日本。

アナザー・ジャパンとはそもそも、三菱地所と中川政七商店による共同プロジェクトの名称です。両社がノウハウを提供し、半年間の研修を受けた全国各地の学生たちが、自身の力だけで、東京駅前にある地域産品のセレクトショップの経営を担います。中川政七商店が教育・経営面で伴走していますが、あくまで学生自身が実務のすべてを行います。

扱う商品は、47都道府県の工芸品から食品まで約400点から500点。カフェも併設します。特徴は、2か月ごとにコンセプトを決めて「特集」する地域が変わる点。2023年6月7日からは中国・四国地方の名品を集めた企画展「アナザー・チュウゴクシコク」が始まりました。コンセプトは「巡る、チュウゴクシコク」。素材が巡る、技術が巡る、島を巡る……などさまざな切り口から、物語のある品々を集めています。

同店で「アナザー・チュウゴクシコク」を担当する藤田玲音さんと山本幸歩さんにお話を伺いました。地域の新しい魅力が伝わる商品を発掘していると藤田さんは語ります。

「アナザー・ジャパンでは、『新しい発見と懐かしさを届け、もうひとつの日本をつくる』というビジョンを掲げています。ご来店いただいた方が“日本=東京”のナウ・ジャパンという認識から、それぞれの地域の魅力が伝わった先にある“日本=地域の集合体”という意識をもっていただけるよう、特集する地域について新しい発見があり、同時に懐かしさも感じてもらえるような場所づくりを目指しています」

アナザー・ジャパンの店内
アナザー・ジャパンの店内。「北海道・東北」「中部」「関東」「近畿」「中国・四国」「九州・沖縄」と特集する地域が2カ月ごとに入れ替わる。撮影時は「アナザー・キンキ」が開催中だった。

アナザー・ジャパンに参加したきっかけとして、岡山県出身の山本さんは上京したことが大きいと話します。

「高校生の頃は、岡山を早く出たい気持ちのほうが強かったです。でも、いざ上京してから帰省すると、自分の好きな場所で“つくってくらす”を体現している大人たちの生き生きしている姿がかっこよく見えた。自分もそんな生き方ができる人になりたいと思い、地域×デザインに可能性を感じるようになりました」

一方、藤田さんはコロナ禍で予定していたイギリス留学ができず、大学2年生の1年間を地元の香川県で過ごしました。当時、ドライブで中国・四国を約1万㎞走り回りますが、その経験がアナザー・ジャパンへの参加に繋がったと振り返ります。

「地元には面白いものや素敵な景色がたくさんあることに気づき、『これらを伝えないのはもったいない』と感じました。ただ、仕事に繋げようというわけではなく、時間を使って存分に遊んだ結果として今があるんだと思います」

プロジェクトの1期生を選ぶ面接で伝えたという藤田さん
「僕以上に中国・四国の現地を巡っている人がいなければ、採用してください」と、プロジェクトの1期生を選ぶ面接で伝えたという藤田さん。趣味はビールを飲みながらの、サッカーのプレミアリーグ観戦。

自ら経営者やバイヤーになることの、難しさと楽しさ。

アナザー・ジャパンでは企画展ごとに、特集する地域出身の学生が中心となって商品のセレクトから仕入れ交渉、接客販売までを行います。実際に店舗の運営に携わってみて、山本さんは、自分たちのやりたいことと経営者としてすべきことの判断のバランスに難しさを感じたといいます。

「経営者としては、どの施策や打ち手を採用するのか優先順位をつけて決めなければなりません。でもどの商品も仕入れたい……。この葛藤で常に悩みました」

そんな苦労がある一方、お客様に商品の魅力が伝わったときにはやりがいを感じる、と藤田さんは話します。

「自信をもってお薦めした商品がお客様の人生を明るくする、そんなきっかけを提供できる喜びを日々の接客で感じています。作り手の方々とは関係性をしっかり築き、東京で販売してどうだったか、フィードバックを共有しながら一緒につくり上げていく。お客様、作り手さん、みんなの喜ぶ姿を見るとやりがいを感じますね」

巡る、チュウゴクシコク
取材時に先行で展示されていた中国・四国の商品。島巡りやお遍路にとどまらない、新しい中国四国の巡りを伝えたいという思いを込めた「巡る、チュウゴクシコク」のコンセプトで、地理的・文化的背景がさまざまな中国・四国地方の魅力を表現する。

開催までの1年間、何度も中国・四国地方を訪れたお二人。バイヤーとしての活動を通して、さらなる地元の魅力を発見できたと藤田さんは語ります。

「いままであまり意識してこなかった地元の工芸品が、地域に根ざして歴史的な文脈の中で継承されていることがわかり、とても面白く感じます。作り手の方々の現場や想いというのは、いち観光客では知る機会がほとんどない。産業を盛り上げるために人生をかけて挑戦する、めちゃくちゃかっこいい大人が地元にいることに刺激を受けました」

想いを贈る、クラフトレモネード。

日本各地の魅力的な商品に出会えるアナザー・ジャパンでは、贈り物選びも楽しめます。「アナザー・チュウゴクシコク」の会期である6〜8月は、お中元やサマーギフトの季節。お世話になっている方に日頃の感謝を伝える、お中元の文化について、令和の学生であるお二人はどのようなイメージを持っているのでしょうか。藤田さんはこう話します。

「東京に出てからはまったく馴染みがなくなってしまいました。ただ、香川にいた頃は、親がデパートにお中元を買いに行ったり、夏になると親戚から美味しいお菓子が届いたりしました。だから、お中元は実家の懐かしさを思い起こさせるキーワードだと感じます」

素敵な文化だと思うので、そういうことができる人になりたい
上京してお中元やサマーギフトを贈る機会はなくなったが、「素敵な文化だと思うので、そういうことができる人になりたい」という山本さん。

ここで、地元のいいものを知るお二人に、アナザー・ジャパンならではのお中元やサマーギフトにおすすめの商品を3つ選んでもらいました。

「瀬戸内クラフトレモネード」は、広島・宮島口の若いレモン農家によるこだわりのレモンを、種以外まるごと使用して作られています。製造期間が12月から3月に限られており、全6種あるうちすでに一部は製造元の卸し在庫がないほどの人気商品です。夏バテにも重なる時期にご自愛くださいの想いを込めて選んだというこのクラフトレモネード。特に強い思い入れがある商品だと山本さんは教えてくれました。

「『瀬戸内クラフトレモネード』の作り手の方に、『巡る、チュウゴクシコク』のコンセプトをお伝えしたところすごく感動されて、『ぜひこちらに卸したいです』と言ってくださいました。私にとって広島で初めてのお取り扱いのご快諾だったので、ドキドキの中で契約した成功体験が記憶に残っています」

アナザー・ジャパン
左3点:瀬戸内産の食材を使用した「瀬戸内バル」。全15種。その日飲みたいお酒に合わせておつまみをチョイスできるのが嬉しい。左から「瀬戸内 鰆の塩焼き」(¥594)、「瀬戸内 牡蠣のアヒージョ」(¥594)、「瀬戸内 鯛とトマトのバジルオリーブ」(¥540)。右2点:ブルーベリーや梅と合わせたフレーバーなど全6種の「瀬戸内クラフトレモネード」。店内では4種を取り扱い中。廃棄が少なく環境に配慮しながら、お洒落な見た目はちょっとした贈り物にぴったり。左から「廣島ブルーベリーレモネード」(¥1,530)、「廣島レモネード」(¥1,450)。

アナザー・ジャパン
本格的なパエリアがフライパンや炊飯器ひとつで簡単にできる「瀬戸内しまなみ 海の幸せパエリア(瀬戸貝・鱸)」( ¥2,430)。 レモンをギュッと絞って熱々でどうぞ!

また、ヱビスビールと一緒に贈ると喜ばれそうなのが「瀬戸内バル」と手軽にパエリアが作れるミールキット「瀬戸内しまなみ 海の幸せパエリア」。全15種のおつまみがそろう「瀬戸内バル」は、どれも瀬戸内産食材を使用。魚介類は港の近くに工房があるため、獲れたてをすぐに加工した新鮮さが味わえます。瀬戸内の恵みを炊き込んだパエリアと一緒に、夏の爽やかなディナーにぴったりの逸品です。

企画展に込める思い、そしてアナザー・ジャパンの未来を見据える。

アナザー・ジャパン
アナザー・ジャパンをこれから先もずっと続く店にしたいと話す、藤田さんと山本さん。

8月6日まで開催される「アナザー・チュウゴクシコク」をもって、アナザー・ジャパン1期生の活動は終了となり、2期生に引き継がれます。今までの成功も失敗も踏まえて全力を出し切りたいと、山本さんは意気込みます。

「正直に言うと、1期のアナザー・ジャパンは経営的に厳しい状況でした。けれど、最近は回復傾向にあります。私たちが経営目標を達成して、1期生全員で創り上げたお店をいい気持ちで終わらせたいと思っています」

そして、アナザー・ジャパンの歩みはここで終わりではありません。現在、2期生の研修が進行中。2期3期と重ねていき、ゆくゆくは、三菱地所が開発を手がけ2027年度に竣工予定の「Torch Tower」へ約400坪規模に拡大出店という未来を描いています。藤田さんは1期生としての活動終了後の“野望”について、こう語ってくれました。

「400坪規模の店舗ができれば、現在は地域ごとに2カ月サイクルで企画展を回しているものが、47都道府県すべての商品を常設展示できるようになります。そうすれば、地域の魅力発信により大きく貢献できる。僕は引き続き新卒社会人として、このプロジェクトに参加したいと思っています。将来的には事業ではなくアナザー・ジャパンという会社にして、社長として学生たちを引っ張っていく経営者になりたいです」

 “もう一つの日本をつくる”、アナザー・ジャパンの挑戦はここから遥か先へ続きます。学生たちが見つけた地元の「いいもの」を、今年のお中元として、あなたの地元に贈ってみませんか?

アナザー・ジャパン

アナザー・ジャパン

東京都千代田区大手町2-6-3TOKYO TORCH
銭瓶町ビルディング1階 ぜにがめプレイス
TEL:ショップ 03-6262-1375/カフェ 03-6262-1384
営業時間:10時~19時
休業日:隔月で2日間(企画展入れ替えのため)
https://another-japan.shop/

文・さつま瑠璃 写真・河内 彩

Share

Recommend postsおすすめ記事