暮れのあいさつや年始回り、転勤に伴う報告やお礼。
年末年始から新年度にかけては、お世話になった方への感謝の気持ちを込めて、手みやげを選ぶ機会が増えるシーズンです。
日本のこの古き良き習慣も近年薄れつつあると言われますが、時代の流れに惑わされず、伝えるべきときに感謝を伝えられるのが、上質な大人のふるまいというもの。上質さを大切にするヱビス好きなら、上質な手みやげ選びにもこだわりたいところです。今回は、日本の伝統的作法に詳しいマナーコンサルタントの松井千恵美さんに、手みやげ選びの極意を伝授してもらいました。

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マナーコンサルタント
松井千恵美さん


大人のマナースクール「桜ことスクール」代表。家族が日本の伝統芸能を嗜む環境から幼少より箏(こと)を習う。現在、生田麗華流家元。また、キャビンアテンダント養成スクールで講師として多くの合格者を輩出。「品」「礼儀正しさ」「心づかい」を身につけるマナー、日本人固有の優雅な立ち居振る舞いを教えている。テレビ出演や執筆活動に加え、ミス・アース・ジャパンのビューティートレーニング講師(2016年度)に就任するなど、幅広く活躍中。

手みやげ選びは迷い抜くのが正解

―手みやげ選びにはいつも迷います。間違いなく相手に喜んでもらえる方法ってないんでしょうか?

松井:いつも迷っている? 素晴らしいことです。まずは正しい手みやげ選びの第一歩を踏み出していると言えます。手みやげを渡すことは、相手との関係をより良くしたい、これからも良い関係でいたい、という意思表示そのもの。何を贈ったら喜んでくれるだろうか、と真剣に迷い悩む、あなたの心づかいが形になったものなんです。迷って当たり前です。

―予想外に褒められてしまいました。ありがとうございます。

松井:でも、漠然と迷っていてはいけませんね。基本的な考え方、というのはあります。ビジネスとプライベートで分けて考えるのがいいでしょう。

【ビジネス】多くの人が高級感と格式を感じるものを

―ではまずビジネスの手みやげから。

松井:取引先に何を贈ったらいいか、と考えるとき、その会社や部署には知らない社員の方々もたくさんいらっしゃるので、その方々の好みにまで思いを馳せるのはさすがに無理ですよね。そういうときには、たとえば、ヱビスビールを選んでみてはいかがでしょうか。

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―え! 本当ですか?

松井:ものの例えです(笑)。でも、考え方としては合っています。すべての人の好みがわからないからこそ、誰もが贈り手の心づかいを感じる高級感と格式のあるもの、つまりはできるだけ多くの人が上質な贈りものだと認識できる手みやげがいいのです。おめでたい恵比寿様のラベルに黄金色のパッケージのヱビスビールは、一枚上手のビールという高級感がイメージとして定着しているので、ビジネスの手みやげとしてはぴったりではないでしょうか。

―アルコール類はまずいかな、というときはどうしたらいいでしょう?

松井:そういう場合もありますよね。誰もが贈り手の心づかいを感じる高級感と格式のあるもの、を基本に、取引先の職場で分け合える(個別包装の)お菓子などを選ぶのがいいでしょう。ただし、プライベートでお宅にお邪魔するときと違って、ナイフやお皿を常備していない職場もたくさんありますから、それらが必要になるものは避けたいところ。せっかく迷って選んだのに、気の利かない人だと思われては残念です。

―相手の職場を想像して、配慮を怠らないということですね。

松井:おっしゃる通りです。その視点で言うと、もうひとつ大事なことが。ビジネスの場合は、出張やシフト勤務などがあり、分け合ったお菓子を食べるタイミングがさまざまです。念のため、生菓子のような消費期限が短いものは避けたほうがいいですね。

【プライベート】相手の好みに配慮するのが何より大事

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―プライベートの場合、親類や友人などの好きこのみをある程度知っているから、逆に悩みます。

松井:その悩みも素晴らしい! 手みやげ選びの基本は身についているようですね。相手がどんなものを好むのか、家族構成はどうなっているか、どんな生活スタイルか。これまでも、これからも親しくしたい相手だからこそ、細やかな心づかいが大事です。そのためには、ふだんから相手のことを知っておく必要があります。リサーチ力が問われますね。

―具体的にはどんなものを選んだらいいでしょうか?

松井:ご親族やご友人のお宅のそばで手に入るお菓子は避けましょう。気づかいのない人という印象を与えかねません。老舗店のお菓子や、ご自分の地元の特産品などは、スペシャル感があって喜ばれるでしょう。季節限定品もいいですね。ヱビスビールは季節感を感じる限定商品がときどき出てくるので、そういうタイミングはぜひ有効活用したいところです。

―相手に喜んでほしいと思うと、つい値が張るものを選びがちです。

松井:手みやげは古くから続く日本の習慣。人生に幾度となく選んだり、渡したりするものなので、無理はしないことです。日ごろの感謝を無理なく伝えられる品物、金額で。ビジネス、プライベートを問わず、3,000〜5,000円くらいが相場と言われていますし、そのくらいがちょうどいいと思います。

手さげ袋や風呂敷のまま渡すのは失礼です

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―いつも曖昧なままなのが、手みやげを渡すタイミング。本当はルールがあるんですよね?

松井:ルールというか、マナーはあります。これもビジネスとプライベートでは少し違います。

―それではビジネスからお願いします。

松井:取引先を訪ねたら、手みやげは応接室や会議室に案内されてから渡しましょう。タイミングとしては、名刺交換やごあいさつが済んだ後。手みやげを入れる手さげ袋や風呂敷は、持ち運びするときの「ホコリよけ」の意味があるので、そのまま渡すのは失礼になります。品物は、いったん自分のほうに向けて傷や破れなどがないか確認し、時計回りに90度ずつ2度回して相手に品物の正面を向け、差し出すのがマナーです。手さげ袋や風呂敷は手早くたたんで持ち帰ります。

―上司や同僚の方を紹介されたり、近況報告が始まってしまったり、渡すタイミングをつかめないこともけっこうあるんですよね。

松井:話が一度盛り上がって、ひと息ついたタイミングで手みやげを渡すのもいいのでは。おたがいに「ホッ」としたところで、「じつは皆さまに召しあがっていただきたく、○○をお持ちいたしました」といった感じで差し出すと、次の会話へのワンクッションにもなります。すでに最初の会話で相手の気持ちもほぐれているので、親近感が深まって会話もさらに盛り上がると思います。

上質な手みやげは、渡し方にもこだわりたい

―プライベートの場合はどうでしょう。

松井:お部屋に通され、きちんとごあいさつをしてからお渡しするのがマナーです。玄関先で渡すのはNG。ただし、すぐに冷蔵庫や冷凍庫に入れていただきたいものや、大きくかさばるものは、先方にいらぬ気づかいをさせることになるため、玄関でお渡ししてもかまいません。

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―和室に案内されると、ちょっと緊張します。やっぱり、きちんとしたマナーがあるんでしょうね。

松井:おっしゃる通りです。和室に通された場合は、座布団には座らず、下座側(出入口から近い席)に座ります。あいさつが済んだら風呂敷をほどき、品物を自分のほうに向けて正面に置いたら、手早く風呂敷をたたみます。それから(ビジネスの場合と同様に)品物を相手の方に向くよう、90度ずつ2度に分けて回してから渡すのです。

―緊張しますね・・・。

松井:せっかく迷い抜いて上質な手みやげを用意したのだから、渡し方までこだわりましょう。一見堅苦しいようですが、ここまで心づかいを尽くせば、相手には必ず伝わるものです。手みやげも多少グレードアップして感じられるに違いありません。

―最後にご相談が。例の「つまらないものですが・・・」という言葉がなかなか出てきません。

松井:最近はあまり聞かなくなりましたね。「つまらない」というあの常套句は、聞かされる側もなんと返事してよいか考えてしまいますね。口にする側も、苦心して選んだ手みやげを「つまらない」なんて言いたくないでしょう。代わりに「心ばかりのものですが」「ほんの気持ちですが」「〇〇がお好きだと聞いていたので」「お口に合えばいいのですが」といった表現を使ってはどうでしょうか?

―なるほど! さまざまな疑問が解決しました。これですっきり年末年始を迎えられそうです。ありがとうございました!