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懐かしい?新しい?カセットテープのススメ。
近年、SNSやメディアで取り上げられ話題になっているカセットテープ。30代後半以上の世代にとっては懐かしい存在ですが、10代20代には新しいカルチャーとして捉えられているようです。ヱビスが歴史を超えて愛され続けるビールであるように、カセットテープというカルチャーも世代を超えて、家族の気持ちをつないでくれるのではないでしょうか。今回ご紹介するのは世界的にも珍しいカセットテープ専門店。中目黒にある「waltz」のオーナーである角田さんにお話を伺ってきました。
世界中から熱い注目を集めるカセットテープ専門店。
—カセットテープ専門店をつくろうと思った経緯を教えて下さい。
この店をはじめる前は音楽関係の様々な会社を経て、音楽ビジネスの立ち上げメンバーとして働いていました。10年以上働いていたのでかなり長い期間になりますね。大好きな会社でしたし、会社にも良くしてもらっていたのですが、漠然と「自分で何かやりたい」と思うようになったんです。そこで「世界で誰もやっていないことで、世の中で自分にしかできないことは何か」というのを考えるようになりました。私は元々プライベートでカセットテープやレコードなどアナログで音楽を聴くことが好きで、これらをずっと収集していたんです。そういった経緯もあってカセットテープ専門店をやったらどうだろうと閃きました。お店の構想を考え出すと、もうやりたい気持ちがどんどん大きくなってきて、この気持ちを抱えて働き続けても仕方ないなと思ってスパッと会社を辞めました。
—この場所にお店を開いた理由を教えて下さい。
私は生まれも育ちもこのエリアなんです。まずは地元であるということが大きいですね。次に商業エリアの中ではなく、ちょっと離れた場所で店を開きたいという想いがありました。自分がやりたいカセットテープ専門店は、美意識の高い事業だという考えがあるんですが、商業エリアにお店を出すと、自分がコントロールできない要因で美意識が壊されることがあると思うんですよね。例えば、店の前に大きな遊興施設などが出来て、大きな音が絶えず流れているとか。商業エリアに出店するとこのようなリスクがありますので、現在のような住宅街を選びました。元々この店舗は倉庫として使われていたんです。貸倉庫として賃貸に出ていたのですが、大家さんと不動産屋さんにお店をやりたいと相談したら、快諾してくれました。
—カセットテープ専門店って、世界的に見ても珍しいんですか?
日本でもレコード店の一角にカセットテープが置いてあるお店はけっこう増えてきていますけど、専門店としてカセットテープを商品の中心に据えている実店舗はたぶん、世界でもここだけだと思います。「Waltz」は、店舗に並べているだけで約5,000本、ネット販売も合わせるとさらに多くのカセットテープを取り扱っています。客層も老若男女幅広いですね。カセットテープのカルチャーってとても多面的で、昔からカセットテープで音楽を聴くのが好きという年配の方もいらっしゃいますし、これまでカセットテープを経験したことのない若い方もいますし、世代によって捉え方が全然違いますね。特に最近はメディアやアパレルブランドなどから取材や撮影の依頼を受けることが多く、撮影で訪れたモデルさんがそのままお客さんになってくれて、自身のSNSで発信してくれたりします。その影響なのか、若い女性が1人でお店に来てくれることも多いです。
現代のカセットテープカルチャーとは。
—音楽媒体としてのカセットテープの魅力を教えて下さい。
音楽って形があるものだと思うんですが、カセットテープってモノとしての独特の可愛さがありますよね。その上で、レコードやCDなど他のどのメディアとも異なる音質・質感があるのが魅力だと思います。また、音楽の作り手側の視点からすると、コストが安いというのも大きな魅力ですね。例えば、同じロット数を作った時にかかるコストはレコードの1/6〜1/7程度です。ミュージシャン達はカセットテープをノスタルジックなものとは捉えていなくて、純粋に1つのアートピースとして選んで、作品をリリースしています。
—海外のカセットテープカルチャーについて教えて下さい。
日本では1980年代の後半になるとカセットでの新譜のリリースはなくなりましたが、欧米では1990年代後半くらいまで続いていました。これよりもっと長く続いていたのは東南アジア。2000年代前半くらいまで続いていたようです。もともとカセットテープカルチャーが復興するきっかけになったのは、アメリカ西海岸のインディーレーベル。制作コストが安く、小ロットでも作れるということで、他のインディーにも広がっていき、それがメジャーにも波及し、今や世界中に伝播しているという状況です。現在「Waltz」には世界中から1日に何十件も「私たちのカセットテープを取り扱ってほしい」という連絡がきます。「waltz」で取り扱う作品は、全て私が実際に聴いて「良い作品」だと判断したものだけなんですが、世界中からどんどん新譜が送られてくるので、聴いて判断するだけでも大変という状況です。
音楽は、終わりのない旅のようなもの。
—角田さんはこれまでどんな音楽を聴いてきましたか?
音楽はそれこそ小さい時から色んな作品を聴いてきました。中でも1980年代のニュー・ウェイヴは自分の中ですごく大きいですね。でも基本的にはオールジャンル聴きますし、歳を重ねると音楽の趣味もどんどん変わってきますね。音楽を聴くというのは終わりのない旅みたいなものだと思います。未知の音楽はまだまだあるので飽きることは、この先ずっとないでしょう。また音楽媒体についてもカセットテープだけを聴いているわけではなく、レコードもCDもサブスクもこだわらずに何でも聴いています。
—父の日にカセットテープをプレゼントするならオススメはありますか?
お父さんの年代によって全然オススメするものが違ってきますね。例えばウチの店にくる60代のお客さんを見ているとビートルズ、カーペンターズ、キャロル・キングとかを買われる方が多いので、お父さんがこの世代ならこれらがベターだと思います。もし、お父さんの好きなレコードやCDを知っているのなら、その作品のカセットテープ版をプレゼントしたら、また違った音質が楽しめるので喜ばれると思いますよ。
お父さんにとっては懐かしく、若者にとっては最先端。他に類を見ない独自のカルチャーとなったカセットテープ。なんだか照れくさい父の日のプレゼントも、これならさり気なく渡せそう。ヱビスを飲みながら、好きな音楽について語ってもらってはいかがでしょうか。親子で過ごす時間を、音楽が心地よくつないでくれます。