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変わり続けるからこそ、変わらない江戸風鈴の魅力。
日本の夏の風物詩といえば、風が奏でる風鈴と瓶ビールから注がれる冷えた黄金の一杯。130年以上の歴史をもつヱビスビールと100年の歴史があるガラスで作る江戸風鈴も然り。日本の風土や時代とともに人々の生活が多様化するなかで独自の楽しみの進化と革新を遂げてきました。日本が誇る場所や人、コトを再発見するシリーズ、今回は江戸風鈴にスポットをあてて、四代目となる由香利さんと公孝さんに話を聞きました。
ビイドロ製の江戸風鈴の始まりとは?
風鈴のはじまりは、約2000年前の中国。風の向きや強さなどで吉凶を占ったという占風鐸や、いまでも寺の軒の四隅に見られる青銅製の風鐸が起源です。ガラス製の風鈴が登場したのは江戸時代。長崎のガラス職人が始めた吹きガラスで作る風鈴が流行して、明治時代にはガラス風鈴を売り歩く風鈴売りがいたほど人気でした。
篠原風鈴本舗は大正4年(1915年)に創業。風鈴を主としたガラスの工芸品からスタートし、第二次大戦後、江戸時代から受け継がれている作り方を踏襲して祖父である篠原儀治氏が「江戸風鈴」という名をつけたと言います。
そんな江戸風鈴の特徴は三つ。一つ目は、型を使わないでガラスで作られていること。二つ目は、音をよくするため、鳴り口をわざとギザギザにして擦れるだけで音が鳴るようにしていること。そして、三つ目は、長持ちするように絵を内側に描いていることです。
公孝さんは、結婚して風鈴職人として入って12年目。ガラス吹きについて、「型にはめないで作るということは、自分の感覚でガラスを巻いて息を吹きながら同じような大きさや形を作らないといけない。まだまだ修行中です」と言います。
弾き手は風。チリンと鳴る音を作る楽器職人。
擦れる音について由香利さんによれば、「もちろん、口をツルツルにした叩く音も素敵ですが、擦れる音のほうが耳にやさしいというのが江戸時代からの考え方です」という。ギザギザの度合いで音は多少変わるが、ほか、玉や口の大きさ、ガラスの厚みなど、機械ではなく手作業でひとつひとつ作るため、すべての風鈴は「たったひとつだけの音色を持つ」のも特徴。聞き比べして好みのオンリーワンの音を見つけていくのも楽しみのひとつです。ちなみに由香利さんは、祖父や祖母に「昔の風鈴の音だよ」と教えられてきたこともあって、低めの落ち着く音が好みだとか。
そして、風鈴の良さは、なんと言ってもチリンチリンと鳴る音を聞く「耳」と、絵柄を見る「目」で楽しませてくれること。ふと風の存在を音で感じ、ユニークな絵柄に気持ちを和ませる。「日常と非日常を知らせてくれる」風鈴の醍醐味をぜひ楽しんでほしいと話します。
伝統柄だけではない、モダンな篠原風鈴デザイン
ガラスに描かれる絵は、油で顔料を混ぜ溶いて刷毛につけて描いていきます。風鈴というと夏をイメージした、透明のガラスに金魚や花火などが描かれた涼しげな柄はいまでも人気ですが、江戸時代の風鈴は透き通ったガラスがメインではなく、全面に赤く塗られた柄だったそうです。風鈴の音が鳴るごとに魔除けとなり悪いものが家に入ってこない。また、絵柄も宝船がやってくるのを待つ(松)という縁起モノで良い福を呼び込むデザインも江戸時代からありました。
では、篠原風鈴本舗は伝統柄のみを作っているのかと思いますが、そこにはこだわっていないという。できることはなんでもやっていくスタイルが篠原風鈴本舗の魅力です。代表作のひとつでもある鮮やかな瑠璃色の空に東京の街並みがモダンな印象の「TOKYOあけぼの」や、S N Sでアップしたら反響が大きかった、コロナ禍に描いたアマビエ(日本の疫病封じの妖怪)、購入した外国人の方に倣ってクリスマスツリーに風鈴を飾るなど、夏だけのものという概念にとらわれないアイディアや絵柄をたくさん生みだしてきました。
現状維持ではない挑戦こそが、伝統をつくる。
そんな挑戦する心意気について由香利さんは、「こだわらないようにして作ることで糸口があるかもしれないから。現状維持するだけではなく、上がるようなことをやらないと実際は現状維持ができないと思います」と話す。
その心意気は篠原風鈴本舗だけではありません。ヱビスビールもまた然り。実は長年かけて少しずつ味を調整して磨いています。農産物である原料は気候条件、湿度ひとつだけでも変わります。どうしても同じものが手に入らないために同じ品質の原料を揃えようと、世界を巡って探したり、開発したり、また、時代の流れに応じた食嗜好に合わせたり、さらにはパッケージも50回ぐらい変えているという。ヱビスビールのシニアメディアプランニングマネージャーの福吉さんは次のように言います。
「ヱビスの思想や味わいなど根幹のところは変わりませんが、時代に合わせてブラッシュアップし続けています。製造工程、原料のバランスなど、磨いてきた要素もさまざまです。ただそれを殊更には言いません。歴史は大事にしますが、つねに新しく前へ走っていくことをしないと、ブランドは残っていかないのではないでしょうか」
時代を超えて長く愛されるために現状維持ではなく「挑戦し続ける」、そんな姿勢が100年以上続く伝統をつくり出していったのでしょう。福吉さんの言葉を受けて、由香利さんは畳みかけます。
「そうですね。飛んできた球は全部拾おうという気持ちです。ある老舗の社長の言葉を祖父もよく言っていましたが、『老舗は最先端を行くものだ』と。それは時代に則していかないと残っていかないということ。この言葉を胸に、途切れずに続けて伝統を守っていきたいと思います」
変わり続けるからこそ変わらない伝統がある。そんな思いの風の音色を感じながら、ヱビスビールをゆっくり飲んで、夏の涼のひとときを楽しんでいきたいですね。
文:喜多布由子 写真:山本雷太篠原風鈴本舗東京都江戸川区南篠崎町4-22-5
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