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2023の年明けは幸せを重ねる箱詰めレシピ
四季折々をお祝いする風習のなかでも一年の始まりとなるお正月は特別。縁起物のごちそうを重箱に詰めることで、「幸せを重ねる」意味を持つおせち料理と黄金の一杯でお祝いします。イタリアの諺にもあるように生きることは食べること。お正月だけではなく、日々の暮らしでは食べることで生きてきたことを感謝する儀式でもあります。そんな忘れがちな“食べるときめき”を気づかせる料理教室「くにたちの食卓 いづい」を主宰し、幸せを重ねる箱詰めを提案するいづいさちこさんにお話を伺いました。
四季折々のときめきを教えてくれる教室
JR中央線沿線国立の駅から徒歩5分ほどの、緑も多い武蔵野の静かな住宅地にある「くにたちの食卓 いづい」。“和食をベースに季節を感じられる料理”をコンセプトに子どもから大人まで四季折々の料理の楽しさと、生活の彩りのヒントを教えてくれる人気の料理教室です。
アプローチ階段を上った先の扉を開けると目に入るのは数十年以上の時を経た木の艶めきを放つ水屋箪笥。大小の戸棚と抽斗には整然と食器や調理道具が並び、大きな古時計が印象的な部屋に重なるように塔になった竹製の盆ざるや大小の木枡は、計量や酒器としてはもちろん、いづいさんは料理を盛る器として四季の移ろいを彩ります。
食の遊び心に惹かれつつ見つけた原点
静岡で生まれ育ったいづいさんは、幼い頃から食に関することが大好き。絵本『だんまりうさぎ』で食のシーンが出てくると、どんな味がするんだろうと想像力を掻き立てられたそうで、大学受験の勉強中には図書館でふらふらと料理本に目が行ってしまうほど。とくにお気に入りはパスタ図鑑だったと語ります。
「ショートパスタに貝や車輪の形があって、食べ物にこんな遊び心があるのか! と。スパゲティーしか知らない私にとって多種多様のパスタは遠い国のキラキラしたもので憧れがありました」
大学卒業後は卸業の会社で働いていましたが、開業する女性たちと話す機会を得るうちに、自分のなかに眠っていたものがふつふつと湧き起こってきます。それは「とにかく食に関わる仕事がしたい」という想い。その欲望は抑えきれず、退職金がもらえる勤続3年を迎える直前に、いづいさんは親の反対を押し切り退職します。
退職してまずは日本料理の修得を目指したいづいさんでしたが、一方で、オーガニックレストランや懐石料理店でもスタッフとして働き始めます。そこで定期的に催されていた料理教室のおもしろさに開眼。やがて、それは「食にかかわる明確な夢」となります。そしてご主人と結婚する際に「料理教室をやりたい」と宣言。教室を開ける家を国立に建て、2004年、念願の料理教室をオープンすることになったのです。
いづい家の心踊る色鮮やかなおせち料理
3月は桃の節句、5月は端午の節句、7月には七夕の節句……。日本は季節の節目である「二十四節気」を大事にしてきた歴史があります。
小寒(寒さが厳しくなる)と大寒(1年のうちで寒さが最も厳しくなる)を迎える1月。新年を迎えるのに欠かせないのがおせち料理です。いわれを紐解くと、平安時代に季節の変わり目の「節日(せつにち)」の行事で出されるごちそうを「御節供(おせちく)」と呼び、のちに節日の一番目にあたる正月料理を「おせち」と言うようになったといわれています。
いづい家のおせちは、結婚した年に両家の実家につくって持っていき、大好評だったのがはじまり。その後もリクエストは続き、毎年の恒例になっていきました。伝統的な和の手法をベースにしながらもアレンジされたいづい家の絶品おせち。10品すべてを紹介します!
大粒の黒豆を控えめの砂糖で煮た「丹波黒豆の飛切」。松の枝がまるでさくらんぼのよう。
「黒豆とピスタチオのマスカルポーネ添えの前菜」はスイーツのように食べられてお酒にもぴったり。
かまぼこの切れ目にはしそといくら、クリームチーズにゆずの皮(写真ではレモンを代用)を添えた「祝いかまぼこ(※記事最後にレシピ公開中)」。
大根、にんじん、きゅうり、りんご、ラディッシュにいくらとごまとゆずがトッピングされた「彩りなます」。りんごの甘さも利いた汁ごと飲める甘酢のやさしさが魅力。
鶏ひき肉のつくね生地を焼いた日本料理をベースにしながらも、ケシの実の代わりにナッツやごまの食感を生かすアプローチを加えたいづい家の定番「ナッツ松風」。粉山椒がふわりと口の中でアクセントに。
子どもたちの大好物「ナッツごまめ」は、カシューナッツ、くるみ、アーモンドとたくさんのナッツとごまが。
「海老と帆立のごま焼き(※記事最後にレシピも公開中)」は、粒マスタードとごまがまぶされた香り高い逸品。塩とハーブだけで焼いた「ローストポーク」には、マーマレードジャム、醤油と酢を合わせたソースとともにいただきます。
旨味豊かな「クリームチーズボール」は刻んだくるみ、アーモンド、ピスタチオ、杏とクランベリーがまぶされた色鮮やかなおつまみやスイーツに最適。
左から万能ねぎとディルがフレッシュな味を演出したいくら、乾燥させてつぶした桜の花の塩漬けのせ、アスパラガス和えと、生ハムを巻いた「手毬寿司4種」。
新年の心をわくわくとさせるおせち料理の数々。ご家族から毎年リクエストが来るのも頷けます。なかでも手軽につくりやすい2品のレシピを教えていただきました。記事の最後にご紹介していますので、ぜひ読者のみなさんもお正月の彩りにつくってみてはいかがでしょう。
旬をいただく日々のお祝いにはヱビスビールで乾杯
いづいさんが教室、また子どもの食育でも大事にしていることは「季節を感じられる料理」。お正月やお祝いの席のみならず、日々の暮らしでも楽しめると言います。そして、毎日のお祝いにはビールで乾杯するそうです。
「季節のものが手に入ったときは、ただ焼く、茹でる、揚げるだけの1品とビールで乾杯します。近所で摘んだよもぎの天ぷらとビールとか、秋だったらきのこのアヒージョとビールとか。シンプルだけど、季節のエネルギーが詰まった野菜料理にはビールが合います」
「季節もの1品だけでも手に入った日はハレの日。ガッツリとしたハレもいいんですけど、プチハレの中でもちょっとした幸せのタイミングはヱビスで乾杯しちゃいます」と、まるで広報担当のような嬉しいコメント。ほんの少しの幸せをつくってビールで乾杯するのはとても素敵なことだなと気づかされます。
毎日おいしいと感じるためのレシピの秘密
季節の一品を彩るおすすめは木の温もりを感じる枡重。カジュアルにパンを入れたり、買ってきたお惣菜を入れたりと、桝重の普段使いを提案しています。桝のお重に詰められた料理は、自然のやさしさに包まれて“おいしそう感”が増す。そして、それが実際のおいしさにつながるといづいさんは語ります。
「無理して大変な料理を作るのではなく、手軽においしくなるようにする。それがおいしいレシピのコツ。ちょっとした料理の楽しみを足していく。 “楽しくすることがおいしくなる秘訣”、そんなヒントを伝えてきたいです」
料理を枡重に入れるだけ、旬の食材を焼くだけ、飾らないおいしさに寄り添うように忘れかけていた日々の豊かな時間と心染みるヱビスビールをゆっくりと味わう。上質な日常のひとときは、なにげないけれど、ちょっと手間をかけるだけで、何倍も愛おしく慈しみ深いハレの日につながります。幸福を積み重ねることが真の人生を輝かせる、そんな食べる楽しさの秘訣を教えてくれる教室が「くにたちの食卓 いづい」なのです。
祝いかまぼこ
*材料* 作りやすい分量 2種各4個分
- かまぼこ・・・・・・8㎝分
- 青じそ・・・・・・・・2枚
- いくらのしょうゆ漬け・・・小さじ4
- クリームチーズ・・・・・・・・小さじ4
- ゆず皮千切り・・・・・・・・・適量
*作り方*
- かまぼこは1㎝幅に切り、上部の真ん中に切り込みを入れる。青じそは半分に切る。
- 1 のかまぼこ4個の切り込みに①の青じそ、いくらの順に等分に詰める。
- 残りのかまぼこの切り込みにクリームチーズを等分に詰め、ゆず皮千切りをのせる。
海老と帆立のごま焼き
*材料* 2人分
- 海老・・・・・・・4尾
- 帆立・・・・・・・4個
- 片栗粉・・・・・・大さじ1/2
- 塩、酒・・・・・・・少々
- 粒マスタード・・大さじ1強
- 白ごま、黒ごま・・各大さじ1/2強(混ぜ合わせておく)
*作り方*
- 海老は殻をむき、片栗粉をまぶしてよくもみ、水洗いをする。ペーパータオルで水けをふき、丸く曲げて楊枝で留める。
- 1 の海老と帆立に塩と酒をまぶす。
- 耐熱皿に②を並べ、180度に予熱したオーブンで4分ほど焼き、裏返して2分ほど焼く。
- オーブンから出し、③の海老と帆立の表面に粒マスタードを小さじ1/2ずつぬり、その上にごまを小さじ1/2ずつのせ、手で押さえて定着させる。
- 再びオーブンに入れ、1~2分焼く。粗熱が取れる前に楊枝をとる。
いづい さちこさん
「くにたちの食卓 いづい」主宰。静岡県生まれ。3児の母。2004年夏より自宅にて料理教室を始める。出張教室、季節のイベント、キッズ教室の開催、カフェのメニュー開発、料理やお菓子の注文販売など幅広く活動。著書に『箱詰めもてなしレシピ』『続けられるおべんとう』『箱詰めお菓子の贈りもの』(すべて誠文堂新光社)、『春夏秋冬 季節の焼き菓子とスイーツ』(立東舎)がある。
http://kunitachinoshokutaku.com/
文・喜多布由子 写真・山本雷太