プレミアム YEBISU

ヱビスマガジン

ビール時間がもっと楽しくなる情報を
お届けするヱビスマガジン!

イチゴかチョコか、はたまたプディングか?
ところ変われば味もさまざま、世界のクリスマスケーキ事情。

イチゴかチョコか、はたまたプディングか?<br>ところ変われば味もさまざま、世界のクリスマスケーキ事情。

12月になると街中はイルミネーションやクリスマスツリーがきらめき、クリスマスムードとなります。クリスマスといえば欠かせないのがケーキ。毎年バラエティ豊かなラインナップが店頭に並びますが、やはり定番といえば、イチゴやサンタクロースをかたどった砂糖菓子でデコレーションされたショートケーキを思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、実はこれ、日本ならではのスタイルであることをご存知でしょうか?今回は、世界各国で楽しまれているさまざまなクリスマスケーキをご紹介します。

シュトーレン(ドイツ)――少しずつ食べ進め、熟成感を楽しむ

シュトーレン(ドイツ)――少しずつ食べ進め、熟成感を楽しむ

まずはドイツの「シュトーレン(ドイツ語読みだとシュトレン)」。ケーキというよりパンに近い見た目で、酵母入りの生地にレーズンやオレンジピールなどのドライフルーツ、ナッツなどを混ぜ込んで焼き上げ、仕上げに澄ましバターを塗り、粉砂糖をたっぷりまぶして白く仕上げます。

キリスト教ではクリスマスの4週間前から始まるアドベント(待降節)という期間があり、その間にイエス・キリストの降臨を待ち、クリスマスの準備を進めていきます。ドイツにおいては、クリスマスを心待ちにしながら毎日少しずつスライスして楽しむお菓子がシュトーレンなのです。シュトーレンとはドイツ語で「坑道、地下道」という意味。見た目がトンネルのようなのでそう名付けられたとされています。14世紀にドレスデンで生まれたお菓子といわれていますが諸説あり、ドレスデンではアドベントの2週目から「シュトレンフェスト」という大きなお祭りが開催されます。

シュトーレンは非常に日持ちのするお菓子で、少しずつ食べ進めていくとさらに熟成が進み、味わいが変わっていきます。ドイツの家庭では11月ごろに作って、ある程度熟成させたうえでアドベントを迎えるのだそうです。「シュトーレンを食べ終わったら翌日から来年のシュトーレンの仕込みを始める」ともいわれるそうで、日持ちのよさと熟成味こそがシュトーレンの醍醐味です。

シュトーレン(ドイツ)――少しずつ食べ進め、熟成感を楽しむ

クリスマスプディング(イギリス)――運試しで食卓が盛り上がる

シュトーレンと同じく中世に起源を持つのが、イギリスの「クリスマスプディング」。もともとは肉や果物などをワインやスパイスと煮込んだスープ的なものだったのが、小麦粉などが加わり、固形になっていったのだそうです。17世紀の清教徒革命の時には、贅沢品とされて作ることが禁止されてしまいます。しかし19世紀のヴィクトリア女王の時代になって、王室はもとより各家庭でクリスマスを祝うことが奨励され、クリマスプディングはクリスマスの象徴の一つになっていきました。

イギリスには、家庭ごとに受け継がれてきたクリスマスプディングのレシピがあるそうです。作り始めるのはクリスマスの5週間前、アドベント直前の日曜日。小麦粉やパン粉、ドライフルーツ、砂糖や卵、スパイス、ビールやブランデー、スエット(牛などから取った油脂)を混ぜ合わせ、型に入れて数時間蒸し上げます。これを熟成させ、クリスマスに再度蒸して温め、熱したブランデーをかけて火をつけ、フランベして食べるのです。

作る過程にもいろいろな伝統的な風習があります。材料は13種類で、これはイエス・キリストと12使徒の数にちなんでいます。生地を混ぜる時は家族が全員参加し、順番に願い事をしながら時計回りにかき回します。生地にコインや指輪などをしのばせ、切り分けた時の当たり・外れで、翌年の運勢を占うという風習もあります。

ブッシュドノエル(フランス)――恋の炎を燃やす薪をかたどる

ブッシュドノエル(フランス)――恋の炎を燃やす薪をかたどる

フランスの定番クリスマスケーキは、日本でも人気のある「ブッシュドノエル」。フランス語でブッシュ(ビュッシュ)とは「薪」のこと。見た目そのまま、「クリスマスの薪」というケーキです。19世紀後半にパリの菓子職人が作り始めたとされているのですが、薪の形になった由来にはいくつかの説があります。

キリストの誕生を祝い暖炉で夜通し薪を燃やしたことにちなんだという説や、北欧にユールという冬至祭でユール・ログという大きな薪を燃やす風習があり、それが由来とする説も。ユール・ログの燃えた灰を畑に撒くと、豊作になるという言い伝えもあります。また、貧しい青年が恋人へのクリスマスプレゼントとして薪を贈ったという逸話がいわれという説もあります。

ブッシュドノエルはロールケーキを土台とし、ココアクリームやチョコレートクリームを塗って丸太に見立て、表面にフォークなどで木の模様をつけることで薪に見えるようなデコレーションを施します。好きなロールケーキを買ってきてデコレーションだけすれば、我が家オリジナルのブッシュドノエルが作れるのも魅力です。

パネトーネ(イタリア)――願いを込めたドライフルーツを混ぜて

パネトーネ(イタリア)――願いを込めたドライフルーツを混ぜて

イタリアでは「パネトーネ」というパンがクリスマスによく食べられています。パネトーネ種という天然酵母を使い、ドライフルーツを生地に混ぜて焼いたものです。使うフルーツは、レーズンが「裕福」、オレンジが「愛」、チェードロ(イタリアの柑橘でシトロンとも呼ばれる)が「永遠」の象徴とされ、アドベントの時季に各家庭で作って友人や家族と贈り合うのがならわしだそうです。

パネトーネはミラノが発祥といわれますが、現在では南米に渡ったイタリア系移民が広めたことで南米諸国でも大人気になりました。イタリアにはもう一つ、「パンドーロ」というクリスマス菓子があります。簡単にいうとドライフルーツが入っていないパネトーネのようなもので、こちらはヴェローナ発祥の銘菓です。パンドーロとは「黄金のパン」という意味で、由来は焼き上がった生地の色など諸説あります。どちらも中世ごろからあるようですが、もっと遡ると古代ローマに行き着くのではともいわれています。

日本のクリスマスケーキの歴史は、明治時代に始まった

日本のクリスマスケーキの歴史は、明治時代に始まった

さて、最後に日本のクリスマスケーキについて。日本のクリスマスケーキの歴史は「不二家」から始まったようです。1910(明治43)年11月、藤井林右衛門が横浜に洋菓子店「FUJIYA」を開店。直後の12月、クリスマスケーキの販売を開始します。その頃は今のように生クリームで飾るのではなく、ドライフルーツや洋酒を使って焼いたケーキに砂糖衣をかけ、クリスマスらしいデコレーションを施したものだったといわれています。

その後日本でイチゴのショートケーキが食べられるようになったのは、1922(大正11)年のこと。藤井林右衛門がアメリカ渡航中に生クリームとイチゴをスコーンで挟んだ「ストロベリー・ショートケイク」と出会い、帰国後日本人向けにふわふわのスポンジケーキにアレンジ。「FUJIYA」で販売を開始しました。クリスマスに食べるケーキとしてショートケーキが人気になった理由としては、イチゴの「赤」と生クリームの「白」が「紅白」を連想しおめでたいイメージがあるとも、「赤」と「白」がサンタクロースの衣装を連想するからともいわれています。

家族や友人と過ごすクリスマス。ご紹介したシュトーレンやパネトーネも人気が高まり、お取り寄せなどの選択肢も増えています。華やかな見た目だけでなく、それぞれのケーキの文化や背景まで知って味わえば、クリスマスの食卓がより豊かなものになることでしょう。

文・POW-DER

Share