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スペシャル企画「父と子の、ヱビス物語」 その1伝統の江戸千住葱をいかに次世代に伝えるか――
ヱビスを手に熱く語り合う「葱善」父子の物語。

<span>スペシャル企画「父と子の、ヱビス物語」 その1</span>伝統の江戸千住葱をいかに次世代に伝えるか――<br>ヱビスを手に熱く語り合う「葱善」父子の物語。

もうすぐ「父の日」、2組の父子のちょっといい話を二回にわたりお届けする特別企画。まずご登場いただくのは、1885年の創業以来、浅草の葱屋として葱の歴史と文化を守り続ける「葱善」の社長・田中庸浩さんと康晃さん親子です。4代目と5代目となるお二人に、江戸由来の葱文化にかける想いを訊きました。ヱビスビールによく合う絶品の葱料理も飛び出す物語、最後までゆっくりお楽しみください。


昭和初期に撮影された葱善の建築現場。紋付を着ている3階中央の男性が葱善2代目で、現社長の祖父にあたる。
昭和初期に撮影された葱善の建築現場。紋付を着ている3階中央の男性が葱善2代目で、現社長の祖父にあたる。

明治期の牛鍋人気で、需要が高まった江戸千住葱。

明治時代から約130年、4代にわたって続く老舗葱屋「葱善」。江戸時代から愛されてきた味を継承する『江戸千住葱』をはじめとした葱を中心に江戸辛味大根、しめじ、山葵、舞茸といったこだわりの野菜を、老舗すき焼き屋や蕎麦屋などに卸しています。

創業前は代々、荒川付近の農家だったといいます。幕末には上野戦争のおり、彰義隊を無償でもてなしたこともあったとか。その後、戦いに敗れた彰義隊が落ちのびる際に、もてなしの礼として武具を置いていったと語り継がれています。そして、文明開化が進んだ明治時代。浅草では300以上の店が連なるほど牛鍋が流行し、鍋の具材として千住葱の需要が拡大。初代・田中善太郎は農家から葱問屋に転身し、葱善を創業しました。

葱善4代目の田中庸浩さんは大のヱビスビール好き。
葱善4代目の田中庸浩さんは大のヱビスビール好き。

そんな伝統の江戸千住葱ですが、昭和中後期ごろから宅地化の進行と葱の品種改良の影響を受け、生産数が激減。しかし、葱善では昔ながらの固定種を『江戸千住葱』と名付け、その魅力を広めようと尽力しています。品種改良された作物が主流のなか、なぜ栽培が困難な固定種にこだわるのか。4代目の田中庸浩さんはこう語ります。

「守っていかないとなくなってしまうからです。いまは一年中食べられますが、葱の旬は11月から3月。栄養価が高く、限定した時期にしか味わえない葱本来の味を伝えていきたいんです」

平成に4代目が始めた江戸千住葱の復活プロジェクトには息子の康晃さんも加わり、試行錯誤の末、ついに安定して栽培できる技術を確立。幼少期から江戸千住葱の味がDNAに刻まれていた康晃さんは、さまざまな経験を経て5代目を継ぐことを決意したといいます。「北海道の芸術系の大学を卒業し、20代のころは国内各地のアートによる町おこしプロジェクトにも参加しました。そのなかで、廃れて消えていってしまう土地の文化って、土地のアイデンティティそのものだなと痛感したんです。僕のアイデンティティは葱にあることが、改めて腑に落ちました」と話してくれました。

“攻める老舗”として、江戸葱文化を現代に伝える。

“攻める老舗”として、江戸葱文化を現代に伝える。
江戸千住葱の苗植え。庸浩さんが厳選した江戸千住葱は毎年11月、台座に据えて縄で締めた「太刀まるき」を明治神宮へ奉納する。

代表取締役である庸浩さんは、さらなる江戸千住葱の栽培技術の向上に余念がありません。土壌づくりや栽培に勤しむ自分の役割を「畑部門」と称し、「ブレンドしたオリジナルの堆肥を使っています。それが適度な水はけがあり水もちのよい土をつくるんです」と胸を張ります。葱栽培に適した土壌があるという噂を聞けば、宮古島まで訪ねて自ら実践して確認。そうして蓄積したノウハウを契約農家とシェアして、より良い生産方法を探求する日々です。ほかにも、栽培から収穫までを授業として教える地域の学校での「食育活動」、神社への葱の「奉納」、卸先への葱の仕分けを行う「目利き」など、庸浩さんの仕事は多岐にわたります。

「先代からも苗と土が葱づくりには大切だと教わりました。栽培が難しい葱だからこそ、有用だという情報もまずは自ら試して、本当に効果があったものだけを農家さんと共有しています。そうでないと信頼関係は築けませんから」

一方、息子の康晃さんは販売促進を担当。マルシェへの参加や直売所に立つだけでなく、POPの作成やSNS発信、ウェブサイトのデザインまでこなします。「初めの頃はなにもわかりませんでした。でも、一緒に出店する方から助言をもらったり専門家とディスカッションを重ねたりして改善するうちに、見せ方ひとつでこんなにも変わるのか、と。人とのコミュニケーションは重要だと再認識しました」。近年は加工食品事業にも力を入れ、現代のニーズに合わせた江戸千住葱のブランディングを目指しています。「江戸千住葱は普通の葱よりも香りが強く、生で食べるととても辛いんです。火入れすると甘くなりますが、甘さだけではない葱本来の複雑な味わいがあります」

ねぎ屋さんのねぎ味噌
新たに加工場を設けて生産を始めた「ねぎ屋さんのねぎ味噌」と「ねぎ屋さんが本気で作ったねぎ塩」。海外展開も考えているという。

土と向き合い江戸千住葱の栽培に取り組む父と、アイデアやデザインによって葱のさらなる可能性を開拓する息子。技の力に裏打ちされた挑戦を続ける姿勢は、“攻める老舗”そのもの。すべては「江戸時代の葱文化を現代に広めたい」という想いが原動力となっているのです。

毎日が「父の日」で、そこにはいつもビールがある。

毎日が「父の日」で、そこにはいつもビールがある。
「父はよきライバルであり、親でもあり、単なる4代目・5代目という表現ではくくれない存在」と語る康晃さん。横で話を聞いていた庸浩さんは「ライバルにはまだまだ」と笑みをこぼしていました。

「父はよきライバルであり、親でもあり、単なる4代目・5代目という表現ではくくれない存在」と語る康晃さん。横で話を聞いていた庸浩さんは「ライバルにはまだまだ」と笑みをこぼしていました。

アプローチは違っても、互いに葱への想いが強いお二人。そのため議論が白熱することもよくある、と康晃さんは言います。「親子だから遠慮はいらない。それぞれ違う考え方をもって、忌憚なく議論ができるからこそいいアイデアが生まれますし、バチバチやりあっても最後はビールで流してしまうんです。今日も大変だったね、お疲れさま、と。飲んでいても仕事の話に戻ってしまうことはありますが(笑)」

続けて、康晃さんに「父の日」の思い出を伺うと、「毎日が特別で、父の日のよう」という答えが。「父は芸術家のような人。土を訪ねて宮古島まで行っちゃうとか、ひとつのことに徹底的にこだわる人と一緒に仕事をしているから、毎日が刺激的ですね」

ねぎ味噌カナッペ
奥から「ねぎ味噌カナッペ」と「葱串かつ」

最後に、葱のプロが教えるヱビスビールにぴったりの葱料理を教えてもらいました。葱と豚肉を交互に刺して揚げた「葱串かつ」と、バゲットにねぎ味噌とチーズをのせてトーストした「ねぎ味噌カナッペ」です。「ヱビスビールは食材そのもののおいしさを引き出してくれるので、飲んでいて幸せを感じます。この2品は田中家の定番。昔、父の日に父と義理の父とも囲んだ宴会での定番料理でした。泡なしビールが好きという変わった父で、注ぎ方にはいつも注意していました」と、庸浩さんは懐かしそうに振り返ります。

葱への愛とこだわりは、ときに衝突も生む。けれど、それも父子の絆があってこそ。毎日が「父の日」という4代目と5代目が親子に戻るのは、ヱビスビールで乾杯する瞬間からのことです。今日も葱を肴に熱いやりとりが始まります。

父の日に、お気に入りのヱビスビールで乾杯

父の日に、お気に入りのヱビスビールで乾杯!


葱善

葱善

1885年創業。千住葱を中心とした江戸伝統野菜を継承し、江戸時代の人々に愛され続けた味を現代に生きる人々に伝え、ミシュラン掲載店舗など数多くの有名店にも商品を卸す。直売所では江戸千住葱、葱善千住葱、辛味大根、大しめじをはじめとした産直野菜や加工品を販売中。オンラインショップでも購入可能。

  • 住所 東京都台東区浅草4-30-10(千束小学校正門前)
  • 営業 毎週木金曜日 10〜13時(臨時休業あり)
  • 電話 03-3872-2990
  • https://negizen.co.jp/

商品のご紹介

江戸そば通セット 
江戸そば通セット 4980円(税込)
葱善が厳選した江戸千住葱をはじめとした薬味野菜とお蕎麦のセット。薬味野菜がたっぷりと入っているので、お蕎麦だけでなくさまざまな料理にご使用いただけます。
(期間限定6月中旬~7月の販売)
ねぎ味噌
葱みそ 770円(税込)
1瓶に1本以上の江戸千住葱を使用した、ねぎ感たっぷりねぎ屋ならではのねぎ味噌。
中サイズ1瓶130g

父の日に贈る、ヱビスギフトはこちら

文・喜多布由子 写真・山本雷太

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