マイスター。
ある技能を高度に習得した人物を、ドイツではこう呼ぶそうです。そしてこの日本にも、マイスターと呼ぶに相応しい人たちがいます。圧倒的な技術と情熱をもって、ヱビスビールを醸す人たち、つまり、日本のプレミアムビールの歴史を力強く切り拓き続ける醸造技術者たちです。

そんなヱビスの作り手たちが、渾身の力を込めて、一杯のビールを送り出します。その名も『ヱビス マイスター 匠の逸品』。50名を超える技術者たちが、その秘術を結集し醸し出す、”ヱビスの最高峰”は果たしてどのように生み出され、そしていかにして飲み手に悦びをもたらすのでしょうか。技術者チームを統括した桜井慶太郎さんに、知られざるストーリーをうかがいました。

ヱビスの最高峰とは何か?

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サッポロビール株式会社
生産技術本部 製造部マネージャー 桜井慶太郎さん


商品技術開発センターでの新製品開発や設計業務などを経て現職。現在は定番のヱビスから新商品まで、工場での製造工程設計など、より広範にわたる業務に従事する、ビール作りのプロフェッショナル。ベルリンのビール専門教育機関であるVLB(Versuchs- und Lehranstalt für Brauerei in Berlin)への留学を経て、同機関よりBrewmaster(ブリューマスター)として認定される。日本はもとより、世界中のビール、醸造技術、市場情報にも精通する、まさにビールの匠である。

ーヱビスの最高峰を目指したという『ヱビス マイスター』ですが、そもそも、定番のヱビスビール自体が非常に高品質な一杯です。そこからさらなる高みを目指すのは非常に難しいことではないでしょうか。

桜井:開発に当たっては、50名以上のサッポロの醸造技術者が関わっています。まずは各メンバーそれぞれに、まさに「ヱビスの最高峰とは何か」を考えてもらうところから、プロジェクトがスタートしました。

ー50名以上のメンバーはどのように選定されたのでしょうか。

桜井:ベテランはもちろん、若手、女性などあえて幅広い人材に加わってもらいました。サッポロ社内には多数の技術者がいますが、今回集まってもらったのは、全国各地の工場で”味作り”に関わっている技術者たちです。

2016_08_02↑サッポロビール船橋工場に集結した醸造技術者たち。写真に写るのは一部で、実際にはさらに数多くのスペシャリストたちが、開発に参加した。

ーまさに”味のスペシャリスト”が集まったのですね。そういった想いの強い方たちと、どのような方向性でヱビスの高みを目指したのでしょうか。

桜井:クラフトビールの流行などからも分かるように、最近ではビールを深く楽しむお客様が増えているように思います。そういった、ビールを深く愛するお客様に、まさに違いを分かってもらえる作り込みをする、というのが一つの方向性でした。

ー違いとは、極端に苦い、濃厚、という意味でしょうか。

桜井:なにか極端な特徴を持つビールを作るのは、確かに可能です。が、そういった極端なビールを果たして毎日飲めるでしょうか。今回目指したのは、違いが明確に分かる”尖った”個性を持ちつつも、優しさがあり、そして口にした瞬間ヱビスであることが分かる、ヱビスらしさを兼ね備えたものです。この3要素のバランスには非常に苦労しましたね。

“ヱビスである”と主張する薫り

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ーロイヤルリーフホップを一部使用しているのが『ヱビス マイスター』の特徴の一つだと思いますが、なぜこの種のホップを選んだのでしょうか。

桜井:非常に薫り高いホップだからです。ただ、このホップは定番のヱビスでも使用しているホップ、ハラタウトラディションでもあります。我々が目指したのは、ヱビスの高みです。ですから、ヱビスのDNAを継承するということにはこだわりました。

ー薫りへのこだわりを強く感じさせる一杯に思えます。

桜井:ハラタウトラディションを収穫し、加工の後、真空保存したものがロイヤルリーフホップです。その特徴は生のホップに近い新鮮な薫りが楽しめます。生のホップは輸送や保存が非常に難しく、どうしても地域や期間限定の商品になってしまいます。しかし、真空保存技術を使うことで、通年でも生のホップに近い贅沢な薫りが楽しめるのです。

今回強くこだわったのは、この真空保存だからこそ楽しめる要素です。通常の保存処理では、どうしても作り出せない薫りと味わいこそ、ぜひ皆さんに楽しんで頂きたい部分です。

ー素材だけでなく、ホップに関しては醸造工程でもこだわったとか。

桜井:ホップの添加は今回、手作業で行っています。手作業にすることで、添加するタイミングと量を柔軟に決定することができます。仕込みが進みつつあるビールの品質を見極め、ベストな量を判断して投入しています。

さらに言うと、『ヱビス マイスター』ではホップを2回に分けて添加しています。こうすることで、さらに薫りを際立たせているのです。

ーなんとも繊細な職人芸ですね。

桜井:そうですね。各工場で強い想いをもって仕込みをしていますよ。

ヱビス”だから”たどり着いた最高峰

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ー桜井さん自身は、『ヱビス マイスター』にどんな想いを込めていますか。

桜井:先ほども言ったように、安易な差別化をするのではなく、ヱビスらしさが息づいた、”その上”を目指したかったのです。ビール好きの皆さんに、「これがヱビスの目指す最高峰なんだ」と分かってもらえる一杯に仕上げたかった。

ーヱビスを知り尽くしていなければ、作れない一杯だったと。

桜井:ヱビスを作ってきた技術がベースにあってこその『ヱビス マイスター』です。これまでの技術的研鑽がなければ、決して作ることはできませんでした。つまり、決して他では作れないビールですし、海外でも作ることはできない。実際にドイツでビールを研究していても、ヱビスのようなビールは見当たりません。ビールは麦芽とホップと水のみで作るべし、といういわゆるビール純粋令はドイツで発祥したものですが、ヱビスはこのルールに則し、長い時間をかけて、ビール作りを磨き続けてきました。その最高峰がこの『ヱビス マイスター』なんです。

ー最後に『ヱビス マイスター』を美味しく飲む秘訣を教えて下さい。

桜井:少し高めの温度、10度くらいで飲むのがオススメです。冷蔵庫で4時間ほど冷やすと、大体8度くらいになります。ですから、冷やした『ヱビス マイスター』を常温のグラスに注ぐと、10度くらいで楽しめます。このくらいの温度で、グラスに注いで飲めば、一層香りが楽しめますよ。

ー分かりました。ヱビスの技術の極限を、ぜひ楽しみたいと思います。今日はありがとうございました。