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ビールを語る上での頻出単語「ホップ」ですが、みなさんこのホップって一体何だと思いますか? そう聞かれて、宿題を忘れた小学生のように、思わず目を伏せてしまう方も多いのではないでしょうか。ヱビスビールの場合、ドイツ・ハラタウ地方で栽培されたホップを使用することで、爽やかさと芳醇さを兼ね備えた香りが楽しめる一杯に仕上げています。

この例からも分かるように、ホップとはビールに大きな影響を与える大事な存在なのです。こだわりのビール飲みなら、愛するお酒の源流は知っておきたいものです。そこで、知っていそうで実はよく知らない、ビールの原材料、ホップの正体について今回はご紹介しましょう

一杯のビールに凝縮されたホップという生命

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みなさん、心の準備はよろしいでしょうか。では、早速ホップの正体についてお伝えしたいと思います。ホップとは、ずばり、アサ科に属する雌雄異株の多年生つる植物です。

ディスプレイの向こうの、みなさんのブーイングが伝わってきますので、少しご説明を。

まず、聞き慣れない「多年生」なる言葉ですが、これは一年で枯れてしまうのではなく、複数年にわたって生存する植物のことを指します。ちなみに一年で枯れてしまう植物は一年生植物と呼ばれ、ヒマワリなどが身近な例です。

そして、さらに聞き慣れない「雌雄異株(しゆういしゅ)」。これは読んで字のごとく、オスとメスが株によって分かれている植物のことを指します。一部品種のビールを除き、ビール作りにおいてはメス株が原材料の収穫源として活用されるのが一般的です。

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つる性の植物でもあるホップは、春に芽を出し、その後ニョキニョキと生育し、花の咲き始める初夏には、なんと7m前後まで育ちます。上の写真はホップ畑をとらえたものですが、この巨大に育ったホップから、ビールの原材料として使用されるのは、メス株から収穫されるわずか数cmほどの球花と呼ばれる花の部分のみです。

普段、何気なく楽しんでいるビールですが、そのグラスの中には、ホップという植物の生命が凝縮されていることが、お分かりいただけると思います。

ビールに香りと苦みを与える。それがホップのチカラ

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ホップと言われて、その姿を想像できないのも無理はありません。なぜならホップとは、ほぼビール醸造のためのみに生産されている植物だからです。しかし、目立たない植物であっても、ビールの香りや苦みに影響を与えるホップは、グラスの中では大きな存在感を発揮します。

ビールに苦みを与えるのは、ホップの樹脂に含まれるアルファ酸です。このアルファ酸が麦汁煮沸過程でイソアルファ酸に変化し、味わい深い苦みをビールに付与します。さらに、このイソアルファ酸は泡持ちをよくし、雑菌の繁殖も抑えるなど、様々な効果を発揮する、ビールの中の、なくてはならない万能薬でもあるのです。

そして、ビールから漂うさわやかな香り。これを作り出すのはホップの精油(エッセンシャルオイル)なのです。ホップは香り成分や苦み成分の多寡によって、ビール作りの観点では、大きく3種類に評価・分類されます。

一つはファインアロマホップ。これは穏やかで上品な香りと苦みを演出する最上級の一品です。もう一つはファインアロマよりも概して力強い香りが特徴のアロマホップ。そして最後が、苦み成分を多く含むビターホップです。

この分類に加え、ホップは生産地、生産方法によって、そのキャラクターはさらなる広がりを見せます。ビールの醸造技術者達は、このあまたあるホップの中から、最適な品種を選び出し、量やビールへの添加時期などを絶妙に調整し、意図する苦み、そして香りを作り出していくのです。

いかがでしたでしょうか。「麦酒」という言葉からも見て取れるように、ビールのお酒としての骨格を形作るのは麦です。一方でホップとは、香りや苦みといった、ビールの立ち振る舞いを作り出す、いわばビールの演出家なのです。今日の晩酌では、黄金色のグラスを少し鼻に近づけて、この素敵な演出家のお仕事を楽しんでみてください。