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現代にも伝わる「ビールを愛した文豪」、森鷗外の多彩な魅力。

現代にも伝わる「ビールを愛した文豪」、森鷗外の多彩な魅力。

130年以上もの歴史のなかで、ヱビスはビールの楽しみ方の進化と多様性をつくり続けてきました。そこで、歴史と文化、そして革新を続けている日本が誇る場所や人、コトを再発見するシリーズがスタート。今回は、2022年に生誕160年、没後100年の節目を迎えた今も、作品が広く読み継がれている近代日本文学の巨人、森鷗外を取り上げます。

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作品に底流する、鷗外の人生の面白さ。

『高瀬舟』や『舞姫』など、教科書でもおなじみの文学作品で知られる森鷗外。芥川龍之介や三島由紀夫といった歴史的な作家だけでなく、平野啓一郎など現代の作家にも絶賛されるなど、没後100年が経過した今でも、まさに「文豪」の名をほしいままにしています。

平安風の雅やかな文体で、浪漫あふれる物語を書いた“手法”に魅了される人もいれば、劇作家・詩人の木下杢太郎が「毛ほどの心の動きをはっきりと拡大する顕微鏡、望遠鏡のような明視」と称した繊細な観察眼によって切り取られた作品の“視点”に惹かれる人もいる。いわば一つに定まらない多様な魅力を擁していることが、鷗外作品が時代を経ても古びず、我々の心をとらえる理由かもしれません。

ただし、これだけ作品が愛され、文豪のイメージが強い鷗外ですが、本業は軍医でした。その傍らで文学や詩歌の執筆、海外文学の翻訳などに取り組む兼業作家だったのです。

鷗外は軍医として、日露戦争への出征などを経て、最終的には陸軍医総監・陸軍省医務局長まで昇進しています。その一方で、有名な文芸雑誌『スバル』を創刊したり、帝国博物館館長や帝国美術院初代院長を歴任するなど、文芸の振興に多大な貢献をしました。

最初からエリートコースを歩んだわけではありませんが、結果として、江戸時代までの封建社会を廃し、近代国家として急速に発展を遂げた明治の世を、政治・文化の両面からリードする人物となりました。

こうしたキャリアの中で、鷗外は自身が経験した物事を起点に作品を起こすことが多かったといいます。多彩な才能を持ち、各方面で現代日本の土台づくりの一翼を担った彼の生き方の面白さが、鷗外作品の魅力の根底にあるのではないでしょうか。

鷗外が国産ビールを、ドイツ流に変えた?

文京区立森鷗外記念館には、一風変わったゆかりの品が展示されています。古いドイツ式のビールジョッキです。鷗外24歳の誕生日に、ザクセン軍軍医部長だったヴィルヘルム・ロートがプレゼントしたものだとされています。

1884年から4年間、鷗外は22歳から26歳の青春時代を留学生としてドイツで過ごしました。この留学中に師事し、交友を深めたのがロートです。ジョッキには、当日の日付や鷗外の本名「森林太郎」の名と共に下記のような文章が彫られています。

「ぶどう酒とビールは活力を与えてくれる。だから飲みなさい」

実際、鷗外は留学中、ドイツ各地でビールを楽しんだようです。鷗外の『独逸日記』には、現地の人々が大量にビールを飲むさまを、驚きを持って眺める心境などが書き残されています。これを読むと、明治の巨人・鴎外が身近な存在に感じられることでしょう。

現代にも伝わる「ビールを愛した文豪」、森鷗外の多彩な魅力

ただ、やはり鷗外は傑物で、同日記には、ビールに深い関心を持った鷗外が「ビールを飲むとなぜ利尿作用があるのか」について論文を書いたことも記録されています。この論文は現地の人から大いに喝采を受けたとも記しています。

ちなみに、現在日本で販売されているのは、ほとんどがラガー(下面発酵)ビールと呼ばれる種類です。元大手ビールメーカー取締役の村上満は著書『麦酒伝来』(創元社)の中で、先に普及したイギリス流のエールビールではなくドイツ流のラガービールが国産ビールの主流になった背景には、ドイツビールに親しんだ鷗外らドイツ留学組が、明治の日本をリードする存在になっていったことが影響しているのではないかとする仮説を紹介しています。

皆さんがたしなむビールにも、多才な先人の足跡が残されているのかもしれません。鷗外の作品を楽しむ際は、彼が活躍した明治に生まれ、16世紀のドイツから受け継がれる、「ビールは、麦芽・ホップ・水・酵母のみを原料とする」ビール純粋令の考えを一貫して守り製造を続けてきたヱビスビールをお供に、日本のありし日に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

ヱビスビールの歴史についてはこちら
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イラスト・ほんだみか

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