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誰に言われるでもなく、好きなことに没頭できるのは大人の特権。この時間があるからこそ、仕事の疲れも吹き飛び、明日への一歩が踏み出せる。
この連載では、ゲストの幸せな時間にフォーカスし、その幸せをおすそ分けしてもらう。

連載第7回のテーマは「競馬」。お笑い芸人のゴルゴ松本さんは30年来の競馬好き。その魅力はどこにあるのか、競馬に詳しくなくとも誰もが楽しむことができる昨今の競馬場についても伺った。

開放感のあふれる競馬場で、深呼吸。今日もドラマが始まる

今や、競馬場に来るのは競馬好きなおじさんだけではない。昼間は子連れ、夜は勤め帰りの会社員やOLなども、気軽に競馬場を訪れるという。

「昔とイメージが変わって、おいしいご飯が増えたりトイレがきれいになったりして、誰でも入りやすくなりました。同僚や女性などを誘いやすくなりましたよね」

邪魔をするもののない真っ青な空。目の前には1周1600メートルのコースが広がる。左手には、遠くモノレールがのんびり走り、その上には時折飛行機が飛んでいるのが見える。右手には首都高が走り、ミニカーのような車が連なる。

ゴルゴさんが好きなのは、朝一番の競馬場の雰囲気だ。人も少なく、空気が荒れていなくて澄んでいる。

「競馬場に朝一番に来て、凪の空気を鼻から吸い、目から映像を取り入れ、静かな音を耳から吸収する。それが僕の栄養源です」

徐々に人が増え、芝生では子連れのファミリーがシートを敷き、くつろぐ。ケバブやお好み焼きなど屋台から好きなものを買って、食べている。熱心に1頭の馬の写真を撮っている女性もいる。まるで公園のような風景だが、公園と違うのは目の前で時折、10数頭の馬が疾走していくことだ。

ファンファーレが高らかに鳴る。
そこからドラマが始まる。

挫折を乗り越え復活する馬に、自らを投影。

1988年、ゴルゴさんが埼玉の田舎から上京してきたころ、日本中が競馬ブームに沸き返っていた。翌年、バイト仲間に誘われていったのが初めての競馬体験だ。

「目の前ですごい速さで通り抜けていった馬をみて、『うわ!馬ってこんなに速いんだ』ってそれに感動しましたよね。本当に猛スピードで駆け抜けていく。こんな生き物がいたのかというくらいの驚き。もちろん競馬は知っていたけれど、生で見る迫力がすごくて圧倒されました」

それから30年。ゴルゴさんは、大きなレースはもちろん欠かさず、暇を見つけては、競馬場へ足を向ける。

上京してから下積みの長かったゴルゴさんは、地方から出てきて中央競馬の馬を蹴り倒していくような馬に特に心を奪われた。

「骨折して休場を余儀なくされ、その後復活して優勝なんて馬がいると、自分を投影して自らを奮い立たせるということはありました」

特にゴルゴさんが印象深い馬といえば「イナリワン」。大井競馬でデビュー、大レースを制したのち、中央競馬に移籍するとGⅠで何度も優勝した。その力強い姿に勇気づけられたという。

馬のデータ、戦績はもちろん、騎手との相性、その日の体調、肌艶、毛並み、表情、すべて頭に入れて数分後の未来を予測する。けれどもどんなに緻密にデータを蓄積して予想しても、強い馬がある日突然負けることもあるし、逆もある。それが面白い。

いくら努力しても報われないこともあるし、偶然の出会いに救われることもある。そんな人生と、競馬は似ていると感じるのだ。

ひとりで。カップルで。仲間と一緒に。多彩な楽しみ方がある

競馬の楽しみは多様だ。おひとり様、学生同士、カップル、ファミリー、老夫婦、仕事仲間。実に様々な年齢層、様々なつながりの人たちが、集まってくる。ある人たちは熱くなって、ある人たちはのんびりと、思い思いに同じ時を楽しんでいる。

「大井競馬場には、スタンドの間に大きなツリーがあるでしょう。夜ならイルミネーションがきれいですから、カップルにもお勧めですよ。僕も一人で来たり、仲間と来たり。かみさんも友達とグループで来たりしています。1000円が1500円になったと言って喜んでいる。金額より、当たったことがうれしいんだよね」

仲間と同じ馬に賭けるのも面白いそうだ。

「仕事帰りにロケバスで、仕事仲間たちとそのまま来ちゃったことがあるんです。最終レースにみんなで1万円ずつだして、全員で同じ3連単をねらって、当たったことがありました。配当をいくらか分けて、残ったお金で打ち上げ。全員の勝ち負けが一緒だから、その一体感たるやすごい。すごく盛り上がる。そんな楽しみ方もありますよ」

ひとりで楽しむのも、もちろん好きだとゴルゴさん。事前にデータは見ていても、最終的に判断するのは、自分の目だ。パドックで馬を観察して、その瞬間の馬のやる気、体調の良しあしを見る。「あとは直感、ひらめき、思い切り!」

馬券を買えば、レースを見つめる目は真剣そのもの。勝っても負けても過去は引きずらない。それが大事とゴルゴさん。

勝った時のビールは、頭のてっぺんからつま先まで体のエネルギーになる

競馬場ではビールを飲むときは、お気に入りのモツ煮込み丼に一味唐辛子をたっぷりかけて、かきこみながら、グビリ。

「僕は、ビールを飲むときは9割方ヱビスビールなんです。かみさんもヱビスが大好き。ビールらしい苦みがいいんですよね。かみさんが泡のバランスを上手に整えて、グラスからあふれる手前でスイっと止めて『上手でしょ』って威張るんだ」

勝った時のヱビスビールはとりわけうまい。

「勝った後のビールは、なんというか頭のてっぺんからつま先までしみわたるようなうまさを感じるね。体のエネルギーになりますよ!」

一方、負けたときは、体のなかが多少ネガティブになっているのか、いつもよりビールの味が苦く感じる。

「そんなときは、ぐっと飲んでさ。よーし明日はまた仕事をがんばろう!って思うんですよ」とトレードマークの大きな目を見開いて、にっこり。

勝ちっぱなしの人生なんてない。負けたら素晴らしい未来を夢見て、また一生懸命働くだけなのさ。

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ゴルゴ松本
1967年生まれ。埼玉県出身。レッド吉田とお笑いコンビTIMとして活動中。
漢字を使って人生の大切さを説く「命の授業」が話題となり、2011年より少年院でも講話を続けている。著書に『あっ!命の授業』(廣済堂出版)、『ゴル語録~命を磨くための50の言葉』(文藝春秋)がある。
東京シティ競馬 大井競馬場
住所:東京都品川区勝島2丁目1-2
公式HP:https://www.tokyocitykeiba.com