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鳴門のうずしお。
鳴門海峡において、その地形と世界三大潮流のひとつとも言われている激しい潮流によって生み出される自然現象だ。

直径20mにも達するうずしおの大きさは世界一といわれており、轟音とともに飛沫を巻き上げて生まれては消えるうずしおの迫力は圧巻。

最速で時速20kmにもなる鳴門の潮流。その中を泳ぐことで身も引き締まった鳴門鯛に迫る。

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漁師たちの技が光る、伝統の一本釣り

鳴門市の堂浦漁港で5代以上続く漁師の松岡義治さんは、鳴門鯛についてこう語る。
「鳴門はいちばん潮が速いとこやけん。揉まれてよう運動しようけん、身が厚くて胴が高い。」

風と潮の流れを見ながらこまめに船を操縦する必要のある鳴門の漁においては、漁師たちは竿を使わない手釣りを主流としており、テグスを使った一本釣り漁は堂浦漁港の漁師たちが江戸時代に広めたとされている。

丁寧に扱われるブランド鯛「うず華鯛」

徳島魚市場の山下敦さんは、軽く笑みを浮かべながら鯛を眺める。
「網と違って、1枚1枚を手で釣り上げているのでやっぱり身が綺麗なんですよね。」

こうした伝統的な漁師の技で丁寧に一本釣りされた鳴門鯛は2008年2月に「うず華鯛」の名でブランド化され、主に関東に出荷されて重宝されている。

この「うず華鯛」というネーミングは全国からの公募で決定された。
地元の人間が集まって決めたローカルの情報ではなくきちんと全国に鳴門鯛を知ってもらうきっかけにしたい、という徳島魚市場の思いが表れている。

料理人を唸らせる、魚の王様

地元・徳島でうず華鯛を扱うお店、徳島魚問屋 とゝ喝の増田英雄さんは料理人として力強く語る。
「脂分・養分をためてすごくおいしい鯛です。普通の鯛と全然違う。」

なかでも、水分を飛ばして短時間熟成させたお刺身が絶品とのこと。
「身の締まりや脂のノリが違うので、驚かれる方は多いですよ」

新鮮な鳴門鯛をさばきながら、身が引き締まっている証として速い潮流を泳いでできたといわれる疲労骨折のコブも見せてくれた。

「鯛は魚の王様と言うだけあって、毎日食べても飽きない。それだけ自然な甘みと香りがあります。」

潮流に揉まれ、伝統とブランドを守る

しかし、こうした評判にも関わらず漁師の松岡さんは時折暗い表情を見せる。
「今年の春は厳しい…。」

ここ3年ほどは温暖化の影響もあり鯛のエサとなるイカナゴの不漁も各地で目立つ。
それに伴い、春先のうず華鯛の漁獲量も低調とのことだ。

それでも、堂浦漁業協同組合の代表理事組合長 大山登さんは、力強く言った。
「網と違って、全部一本釣りするから今日どれだけ釣れるかもわからないし、今年みたいに厳しいときもある。それでも、待つ人は待ってくれる。」

「どれだけ釣れるのが厳しくても、自分たちで作った基準をきっちり守っていかないといけない。それがブランドを守る、ということよね。」

松岡さんの息子、淳さんは2018年10月から漁師の見習いとして一緒に漁に出始めた。
まだまだ伝統の手釣りはできないものの、竿では立派な鳴門鯛を釣り上げた。
「よう釣ったな。」

厳しい世界だ、というものの息子に向ける眼差しは優しい。

伝統の一本釣りの担い手として歩み始めたばかりの淳さんは、控えめに笑いながら言う。
「守っていけるものは守っていきたいな。」

うずしおが育てた絶品の鳴門鯛と継承される伝統をヱビスビールで乾杯する。
ここに、ニッポンの幸せ。

◆名称:徳島魚問屋 とゝ喝
◆住所:〒770-0918 徳島県徳島市紺屋町13-1
◆電話:088-625-0110

◆名称:堂浦漁業協同組合
◆住所:〒771-0361 徳島県鳴門市瀬戸町堂浦字地廻り弐282-4
◆電話:088-688-0533

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