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秋田県との県境にある山形県真室川町は、山林が面積の8割以上を占める山あいの町。

山菜が豊かなことで知られる真室川町近辺において、とびきり珍重される高級キノコが「トンビマイタケ」であり、人々が集まるお祝い事やお盆など、様々な席で一番のご馳走として親しまれている。

工務店経営を本業としながらも、真室川で採れる天然キノコの販売を行う三宅清一さんのトンビマイタケ狩りに同行し、話を伺った。

荒れた険しい山道には、スズメバチやクマも

「こんなところ普通ですよ、山は。天然のマイタケ採りだったら。」

斜面の下側に生えるトンビマイタケを探すには、ひたすら急な斜面を進むことになる。
時にはロープや安全帯をつけることも。

「怖いのはスズメバチなんですよ。来たら集中して頭を狙ってくるんで。だからヘルメットつけてるの。」
「まあいつクマと遭ってもおかしくないんで、もう来た時には諦めてください。」

険しい山道を登りながら、さらに山の生き物の怖さを語る三宅さん。

「山に来たらもう諦めるでしょうからクマの話とスズメバチの話はしなかったんです。そんなこと言ったら来なかったでしょ。」

しかし、それでも1つ見つければ数万円にもなるトンビマイタケ。
夜明け前に入山し、一番乗りで採取する価値はある。

気候の影響で困難を極める、幻のキノコ探し

かつて林業で活用されたこの山だが、現在は荒れて作業道も消えかかっており、“道らしき道”はない。

「途中で折れてる木とか、上の方で支障があって枝折れしてる木が天然のトンビマイタケの出る木なんですね。」

しかし、気候の影響なのか毎年生えていたはずの木でも、今年は生えていないことが多いらしい。

三宅さんの勘と経験を以ってしても、見つけることは困難。
だからこそ、トンビマイタケが幻のキノコと呼ばれて重宝される。

見つからなければ道のない山をひたすら戻るつらい帰りが待っている。
今日は空戻りになってしまうのだろうか。

「もうちょっとがんばろうか。」

諦めかけたその時に出会った、幻のキノコ

2時間半の”道のない”登山の末、その時がきた。

「お〜 あったぞ〜!出てます!見てください」

大木の下にいたのは、20キロ超の大物トンビマイタケだった。

「いや〜、よかったね〜。この木に手をついたら、何か香りがしたんですよ。そしたら、足元に大きいのがありました。」

見つけたトンビマイタケは20kg近い重さを誇る最大クラス。
1kgにつき3000円以上の単価で取引される天然トンビマイタケ。この日の収穫は6万円以上だ。

「待ってる方がいっぱいいるので、トンビマイタケなんで飛ぶように売れます」

「もう山神さまありがとうございます、の一言ですね」

家庭で親しまれる、最上級のご馳走

「おいしく食べられる時間が半日くらいしかないんです。これからもう硬くなるだけなので。」

食べ頃の収穫期間はわずか半日というのも、トンビマイタケが幻のキノコたる所以だ。

山中で収穫した時点では色白だったトンビマイタケだが、下山する間にも時間の経過や摩擦によって黒く変色してしまう。
収穫したトンビマイタケを丁寧に扱いながら下る山道は、登ってきた以上に険しい道に思えるが、背中の重みにも関わらず戻りを急ぐ三宅さんの足取りは軽やかだ。

持ち帰った最大級のトンビマイタケを三宅さんのお宅で調理していただく。

柔らかい状態のものは醤油や味噌で炒めて食べるのがこの地の定番だ。
硬いものは味付けして天ぷらにする。

「トンビマイタケは味が濃厚でコクがありますね。それなのに、どれだけ食べても口飽きない。」

旬の短い幻のキノコを前に、山の苦労と恵みを分けあって琥珀ヱビスで乾杯する。
ここに、ニッポンの幸せ。

◆名称:真室川 きのこ本舗
◆住所:〒999-5312 山形県最上郡真室川町大字新町776-32
◆電話:0233-62-4441
◆FAX:0233-62-3373