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※「Pen」2016年11月1日号掲載の記事です。

キノコは秋を彩る味覚のひとつであり、中でもしいたけは日本を代表する食材だ。その証拠に英語やフランス語に固有名詞はなく、「シイタケ・マッシュルーム」などと呼ばれる。
 干した乾物が通年で出回っており、ダシ取りや煮物などでお馴染みの食材だけに、単体で主役を張れるとは思えなかったが、そんな先入観を気持ちよく裏切ってくれたのが長崎県南島原産の「しあわせしいたけ」だ。

アワビのような、繊細で特有の歯応え。


長崎県・南島原産 肉厚生しいたけ

なにしろ傘が度外れて大きく、直径は8〜10㎝。厚みもボリューム感たっぷりで、重量は通常の2〜3倍に達するという。生しいたけの「旬」は9〜11月と春先と意外に短いので、こうしたジャンボしいたけに出会う機会も必然的に乏しいのかもしれない。

それを調理するレシピは「しいたけのステーキ」。あやかり的な偽名ではなく、まさにそう呼ぶにふさわしい重厚な仕上がりになっていた。今回は蒸し焼き段階でヱビスビールを加えてコクと風味を増しており、醤油とバターの焼けた香りが食欲を刺激する。
 しなやかな弾力をもつ肉厚の身を噛みしめると、滋味豊かな旨味が口の中いっぱいに滲み出てくる。この食感はなにかに似ていると記憶をたぐってみて、アワビに似ていることに気付いた。まさにそう思わせる、キメ細かで密度の高い肉質の歯応えなのである。
 この特別なステーキには、やはりキメ細かでまろやかなヱビスビールがよく似合う。今年の春にクオリティアップされて、コクがさらに進化。フルーティな香味バランスが向上したことで、鼻から抜けて広がるヱビス香もより華やかになった。秋の夜長の涼やかな気候を、ヱビスビールとともに満喫していただきたい。

しいたけのステーキ

材料(2人分)

しいたけ/6個
オリーブオイル/大さじ1
バター/約10g 塩・コショウ/適量
醤油/大さじ1/2
ヱビスビール/大さじ2
パセリ/適量 レモン/適量
トレビス/適量 クレソン/適量

つくり方

1 しいたけは石づきを取り、軸に十文字の切り込みを入れ、傘に格子の切り込みを入れておく。
2 フライパンにオリーブオイルを熱して、しいたけの傘のほうから焼いていく。
3 裏に汗をかいてきたら、返してヱビスビールを加え蒸し焼く。
4 バター、醤油を少し焦がすようにして全体をからませて、塩・コショウで味を調える。
5 器に盛り付けて、パセリのみじん切りをかけ、トレヴィスとクレソンを添え、レモンを搾っていただく。

ビタミンを豊富に含み、茎部分まで美味しい。

乾燥の方が栄養価は高く、細胞が壊れることで旨味成分も漏出しやすい。ただし、このような「ステーキ」は生しいたけだけの調理法。主にビタミンB1、B2、Dが含まれているほか、抗酸化作用で動脈硬化の予防や食物繊維がコレステロールを下げるともいわれる。干ししいたけでは外す茎部分も美味しくいただける。口の中に広がった旨味をヱビスビールで喉の奥に洗い流した瞬間に、ほっこりした幸せを感じられるのではないだろうか。

宇田川 淳・写真 photographs by Jun Udagawa
笠木恵司・文 text by Keiji Kasaki
廣松真理子・フードコーディネート food coordinate by Mariko Hiromatsu

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